さてこのラウンド、僕は休憩。今日は3ラウンドなので、真ん中休みは1番介護されてる感じ。
最終ラウンドのチームのオーナーとお茶に出かけた。
「うちのテーブルは、Northの1Hオープンにパートナーが2Dオーバーコール。シングルレイズでサポートしたらハートリードからパンプにあって3ダウン。裏はNSが3NTに行って落ちちゃうし。」
行きましょうかと彼女の方に目をやるとiPad取り出してなんかやっている。ゲームかなと思って覗いてみるとなんとBBO。まじか。
「今コロナで何でもお休みでしょ、BBOでACBLのシードポイントを発行してる試合があって、千点目指して貯めてるの」
「今いくつあるんですか?」
「965点!」
「それって千点貯まると良いことあるんですか?」
「ないけど良い目標なのよ」
いやはや、休みラウンドでBBOやるなんて、熱心さにはほんと頭が下がる。
待ってると一区切りついたようで、2人してビル目の前のルノワールに向かい、コーヒーを飲む。
僕は週明け提出の宿題をやるためブリッジセンターを離れるのが目的だったのだけど、気づけばさっきのラウンドのハンドの話に。彼女のチームは、今期とにかくスコアが悪い。
「さっき5D置かなかったんでしょ?聞きましたよ〜。」
この方はずっとWestに座っていた。
結果NSで4Sメイクされ、これは寒くて凍えそう。
「Westはハート長くてスペード短くてマイナーに点持ってるから、パートナーとの噛み合わせは結構良いんですよね。」
「ほんとそうなの。」
…別に5D置くのはそんな難しくないんだけど、1番深刻な問題はそこじゃないかなと。
オーナー以外みんなプロのチームで、焦点となるハンドをオーナーが引いちゃってるツキのなさ。
仮にオーナーがEastでプロがWestだったらここまで悪いスコアになることはまずなかっだたろう。別にオーナーだって、気分が良ければ5Dを置く日もあるだろう。強いチームでも、本当にどうしようもないほど大きな流れを失うことあるんだ、とちょっと背筋が寒くなった。
「その後2NTも、ダイヤフィネスなんてしたら4ダウンしちゃって」
ダイヤフィネス抜けは、普通のディフェンスで2ダウン以上する。NVならフィネスの期待値はサブゼロ付近なのでフィネスして良いけど、バルだと1ダウン確定も少しだけあるかもしれないくらい。
まぁないか、計算したらやっぱりオッズはフィネス。バルでもなんでもIMPのノンダブルコントラクトは、基本メイクだけを考えたら良いようだね。
てか4ダウンはしねぇわ
「チームに帰ってそんなことを聞いたけど、みんなはノーコメントで。それ以上に5D言ってよって感じになって、そうよねって。」
…オーナーを責めるムードと言うよりは、チームも僕が思ったことと同じことを感じたのかもしれない。あるいは降格圏脱出に向けて、今後どれだけ取ればいいか計算していたか。
「最終ボード、これも良くなかったのよね。」
「あっ、その話聞きましたよ。ちょっと災難でしたね。」
我々は平和にSouthの3NTが7メイクしたボードだ。
「うちのテーブルは、Northの1Hオープンにパートナーが2Dオーバーコール。シングルレイズでサポートしたらハートリードからパンプにあって3ダウン。裏はNSが3NTに行って落ちちゃうし。」
East目線では、ダブルで介入すると自分でコントラクトをプレイする目がない。ほんの少しの強引さで大きくゲインすることもあるけれど、この手では大損だ。弱い三の代のレイズを受けてなくても、-200になった瞬間があるという意味でそれは変わらない。
その裏の3NT落ちちゃったテーブルでの話を、うまくディフェンスして落としたEastさんから聞いていた。彼のテーブルでは、オークションはWestから
P 1H P 1NT;
P 2C X 2S*;
X P P 3NT//
*C4+, inv.
こう来ると、West目線でオポーネントはいかにもスペードが止まってそうなのでダイヤリードかな?と正しくDQを選択したらしい。Eastさん曰く、後から控えめにダブルで介入したのが当たりだったとのこと。
全く介入されずスペードリードとあいなったうちと比較しても、確かにという感じ。効いてるよねぇ。
ーーーーー
2人でお茶するのなんてほんと久しぶりだったから、ハンドの話もそこそこにいろんなお話をした。
遺伝子操作って優秀な子供が作れるレベルまできてるんでしょ、なんて聞かれたから、iPS細胞を使えばゲイカップルの子が出来ますよとか、レズビアンカップルからは女の子しか産まれませんとか。卵子は劣化するのとか、人工子宮がどこまで進んでるかとか。この人はもともとメディカル系だから、そっち系のサイエンスに興味があるみたい。
日常のブリッジの話とかこの日本リーグの話に戻ったりだとか、この時間やる予定だった宿題そっちのけ。
ちょっと関心したのが、今のチームについて彼女が言及したとき。
こんだけプロいて前期優勝してて…と思えば流石に嫌味の一つくらい言うか、と思って聞いていたら
「チームメイト、まだ日本リーグ2部でプレイしたことないって言ってたわよ。ふふふ、やぁねぇ」
なんと品のいいコメント、これはClass!って感じしません?
ーーーーー
"徳の積み方"
次のラウンド開始45分前くらい、そろそろ戻りますかとお会計。
「僕の分は600円くらいですかね」
「いいわよ、出してあげる」
「いや、いいです。次当たるんです。」
「あら勝負だからね、健気ね。」
「むしろ僕が払います…1260円ですね、丁度お財布にあるな笑」
「ちょっと待って、それはいやよ!笑」
熾烈な攻防の結果、数十円多く払ってもらったようだ。どんだけ徳積めたかな?
ーーーーー
チームメイトのKさん。
このラウンドが始まる前は、次優勝の目も降格の目も無くなったら休むと宣言していた。どうなったかと言うと…このラウンドは負け。
スコアシートは団子かつ、下位対戦がほぼ無いので勘定が難しく、とりあえずその場で分かったのは
・優勝の目はない
・ぱっと見12VPとれば自力で降格回避
いまよくよく目を凝らしてみたら、8VP強とれば理論上落ちる形はないらしいが、僕はよく分かってなかった。
曰く、「このラウンドはレギュラーペアで組んでとりあえずスコアを落ち着かせよう」とのこと。うん出場だ、頑張ろう。
ーーーーー
"少しのユーモア"
お茶をしたチームオーナー、スコアボードをじっと眺めている。
僕を見つけて言うには、
「今回も負けてまだ最下位…次あなたたちから18VP取れば降格圏脱出できるって言ってるんだけど、どう思う?」
うちに勝つかどうか以前に、実はこれ、非常に厳しい。
この時点でのスコアボードは
1位 75.55
2位 69.64
3位 64.64
4位 61.69
5位 58.61←我々
6位 57.68
7位 50.44
8位 41.75←彼女ら
で対戦は、
1位-4位
2位-6位
3位-7位
5位-8位
下二つ降格するから、8位のチームはまず6位のチームの現時点のスコアを上回らなければならないので、最低でも最終戦で16VPが必要となる。
その上で6位7位が両方とも大コケするか、17VP勝って我々より上回り、6位が0-3VP級の大コケするか、7位が負けるかするのを願う必要がある。
なにせウチはチームメイト日本代表だし、7位のチームも最終ラウンドはほぼプロだけでやたら強いのよね。残念ながら彼女のチームは97%以上降格してるだろうと見積もった、勝率にして3%を切っているということだ。
どう思う?って言われて勝ち目は薄い、じゃああまりにも冷たいだろう。できることなら気の毒な彼女をクスッとさせてあげたい、あなたならどんな言葉をかけるだろうか。
Plan your call.
僕はその場でパッと
「5-1ブレイクの、Kグルトン降ってきてメイクする確率くらいですかね。」
と回答。もう、何よ、とすこし笑ってもらいその場は終了する。
他のゲームはさておき、ブリッジでは勝率3%なんて未知の世界である。勝率3%のプレイが選択肢に入る時はそれ以上のプレイが無い時。僕はもう、そんなカスみたいなコントラクトになかなかならないお年頃なのだ。だから3%の肌感って、あんまりよくわからない。この辺かなと思ってカードコンビネーションを答えてみた。
ただ回答した時も今も、5-1ブレイクのKグルトンって3%よりすこし少ないのではと思っている。調べてみると…なんと2.42%!結構いいゲスをしたようだ。
裏のKグルトンとなるとこの半分なのでなんとも言えないが、いいゲスでまたすこし徳を積んでしまった。
ーーーーー
"特別なプレイヤー"
2017年チャンピオンズリーグ。
1stレグ、バルセロナはPSGに0-4で敗北。2ndレグに際して両チームの選手間で言われてたのは、「不可能を可能にするチームがいれば、それはバルセロナだけだ」だそうだ。
我々に関してもおよそ似たような状況だ。
少なくとも対戦チームはそう思っているだろうし、前期は我々ペアが大崩れで0-20で負けたのもあって流石にちょっと緊張。
緊張とのコーピングの仕方は人それぞれ色々あるけど、僕はその緊張をなるべく客観的に確認するようにしている。
緊張すると交感神経系が活性化し、アドレナリンが血中を流れ全身を巡り、脈拍は上昇し、指先は冷たくなる。いま自分はどうかな?あ、足指冷たいね。アドレナリン出てるけど、ブリッジはガチガチにならないようにしないとね。…そんな感じで勝負に挑むことで、ちょっと良い結果になると信じてテーブルに着くのだ。
オポーネントは日本代表プレイヤー。
特別でないプレイヤーが特別なプレイヤーに挑む。そのことを認識するだけで何倍も上手くやれるならその方がいい。このラウンドで自分の力を発揮できて、結果8VP以上取れたらいいな。そんなメンタルセットで最終ラウンドに臨んだ。


