日本リーグ、1日目終わって今回宿泊したHプロ宅へ。帰り道話しながら、
「そろそろあの問題、みんなに聞いてみる?」
「いいっすね」
あの問題、とは僕が読み返している"Bridge,ZIA...and me"という、Michael Rosenbergの書いた本に収載されていたハンドの一つである。day1前夜にHプロに出題して、2回間違えつつヒントをあげて、ようやく解けた問題だ。その夜出題しようかと話していたのだけど、明日試合なのに眠れなくなる人がいると悪いから、という理由でライングループへの投稿が1日延期されたのだ。と言ってもday1夜は眠れなくていいのか問題はあるが。
C4が二つあるので、どちらかを適当にC5に変えてください。1スクロール後に1ヒント、もう1スクロール後にさらに1ヒント置いておきます。
どのくらい難しいかというと、ノーヒント+アルコールを飲んだ状態だと、日本代表プレイヤー×2も解けないくらい。
ヒント1:Sを負けに行ったら右手は即ショーアウトしてハート捨て。左手からはHTが返ってきます。
ヒント2:細部に神は宿る。
day1前夜の会話から。
プロの答えその1。問題見て1分以内。
「HK勝ってスペードJと出して負けに行って、なにでてきます?」
「じゃあ、左手SK勝ってHT。」
「ハンドで勝って、SAだけ取ってダイヤAK剥がしてHAでダミーに渡って、DQでSQ捨ててST。これで出来てません?」
「5card endingでハンドはCAQJxx、ダミーはST、D7、CTxxだよね。右手はDxとCKxxxを持っていて、ダイヤを捨てます。」
「じゃあD7出します。」
「CKxxを残します。」
あっ。3card ending、ハンドはCAQJのみになっちゃったから、セルフスクイズされている!11トリック目でCフィネスすると、あと手からCA、CQと出す羽目になって1ダウン。このプレイはもはや右手のクラブ3枚に耐えてないから、それなら早い段階でCTを出したほうがよかったね。
プロの答えその2。問題見て5-6分とかそのくらい。
「あーようやく解けた。マジでむずいな。DQx、CTxxを残して、右手にDxで放り込みます。クラブ返してきたらメイク。」
「えーとそれは…本質的に同じだね」
この時はなぜかそう思ったんだけど、ちょっと待て。それっていわゆるスローインして1ダウンってやつでは?プロに妄言吐かせたなら、出題した甲斐あったな。
「クラブうぜー。」「こういうのわかんないの珍しいんですけどね。」
確かにそうだよね。
考えること更に5分、「わかったwwH4ww手順これでいいのかというと。」
結局正解でした。
右手に
-
xxxxx
xxxx
Kxxx
を想定して、リードをHK勝ち、ダイヤ剥がしてSA,SQ。HTバックをHA勝ってHQをアンブロック。DQで手のスペードを捨ててST。この瞬間
T
4
7
Txx
-
3
-
AQJxx
と残していて、右手は- x x Kxxxを残している。ダイヤを捨てたら手からはクラブ捨ててD7。ハートを強制的に捨てさせた所で手からはまたクラブ捨て。クラブフィネスして、H3をH4でオーバーテイクし、もう一度クラブフィネスでメイク。この問題、ウィナーは見かけ上S2H3D3C3の11個あるからシンプルスクイズでいいように思えるけど、エントリー問題を解決するためにウィナーを10個に減らして、プログレッシブに3スータースクイズにかけ2つ増やすという問題なのでした。一歩下がって二歩進む。
ちょっと待って、このプレイは右手がC3枚の時を失ってない?
いやいやそんなことはありません。先にダイヤを剥がしておいてSA、SQと進みで左手に負けた時、マイナーリターンはクラブのフィネスのエントリーが足りて、ハートリターンが来たら右手はH5枚マックス。その時C3枚が同居しているシェイプは0=5=5=3のみ。上記の6card endingの一歩手前、DQキャッシュ時にシェイプが読み切れるので、STとDQの片方だけキャッシュしてハートを捨てて、CTをダミーから引いてください。
よく出来てるハンドでしょ?単に解けるだけじゃなくて完全性も担保されてる。ちなみに左にダイヤが4枚いたりCKがいたりするとメイクしない。
難しい数独を解くのは作問者との対話に似ていると言った人がいたけど、これもそんな感じがする。
こちらはday1夜の会話。
「いい本ですね、どうやって見つけたんですか?」
「2017年にイタリア旅行のお供に本探してて。Ziaが好きだからZiaでググったら出てきて買ったの。こんな調子で濃い内容がブログみたく書いてあるから読みやすくってお気に入り。」
「誰向けなんすかねその本。この話がいい話だってわかる人、全然いないと思いますよ。」
ブリッジ教師ならではのコメントだ。確かに、競技の裾野って広いからプレイヤーの1%もいないと思う。ブリッジの本ってだいたい見たことあるような話しか書いてないけど、この本は一応それなりにハンド食ってる僕でも目からウロコなんてことがよくある。前書きにZiaがこんなことを書いていた。
"エキスパート界隈ではよく知られている秘密だが、ローゼンバーグに解けなかったら問題が難しすぎるという事なのだ。この本は初級者用ではないと警告しておくのがfairだろう"
そういう大事なことは、前書きじゃなくて表紙に書いた方がいいと思いますよ。
Hプロが若者のライングループに出題している間、本に書いてあったこのハンドの小ネタを話した。まずローゼンバーグはこの問題をブリッジ3年生の時にシングルダミープロブレムとして解いたそうだ。
その20年後くらいにダブルダミー問題として出されて、すべてのスーツのスモールカードがxで書いてあったから、「この問題を出した人にダミーのハートはA42じゃなかった?と聞いてみて」と尋ね返し、「そうでした!なんでそんなこと知ってるんですか?何か違いはあるんですか?」と言われた…とちょっといい話っぽく書いてあった。
「ブリッジ3年生でこれ解くってやべーっすね」
「しかもシングルダミーで。でもその頃にはこの人スコットランド代表になってるからね」
「まじか」
「Tプロにそれって非現実的じゃないですか?と言ったら、それはまじめにあると思うとか言ってたよ」
「ていうかKing Gnuよくないっすか?」
「わかる」
とかグダグダ話してたら高校生から回答が。マイナーで絞るルートだったかな、大人の厳しさを教えてあげましょうとか言って不正解と返したら次に正解を送ってきてびっくり。
「これ解く高校生えらいっすねー。」「いやほんと偉いよ。」
day2の後。
お魚屋さんでハンドの話が一通り終わったところ、パートナーがあの6NT解けないっすと言ってきたから、これ幸いとチームメイトにも出題してみた。
「高校生これ解いてたんだよ」
Pd「ということは、義務教育レベルってことですかね?」
「うーん、初等教育に毛の生えたくらい?」
チームメイト、黙々と考えた結果覚えた事にして後で考えようと言っていた。きっと帰りの電車、お酒が抜けつつある時にでも解けたんじゃないかしらね。
この後1時過ぎくらいまでsnookerのGerman Masters見ながらブログ書いて、前回記事の一番最後の3Hのプレイ解析で力尽きて眠りに落ちた。きちんと力尽きれたので、とてもよく眠れました。