日本料理フェローシップ | 山根大助オフィシャルブログ「山根大助のイタリアンな日々」Powered by Ameba

日本料理フェローシップ


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日本料理アカデミーの第6回「日本料理フェローシップ」公開ワークショップに参加した。

日本料理アカデミーは京都菊乃井の村田さんをはじめとする数々の料理人が中心となって伝統を再確認し、技術力を向上させる目的で作られたNPOである。特に海外とのパイプを持ち、新しい情報を取り込み正しい日本料理の姿を世界中に発信することに力を入れている。

僕は発足当時からその様子をわりと近くで見てきた。素晴らしいエネルギーと行動力で今や外務省、農林水産省、文化庁をはじめ様々な企業から後援を受ける非常にオフィシャルな機関へと成長した。すごいなぁといつも感心している。

反面、僕らイタリア料理屋はある意味蚊帳の外で、正直とても羨ましい。だってかたや日本中を味方に付けて全ての日本料理店、日本政府が共通の目的と広い意味での共通の利益を求めているのだから。先日のミシュランにしても日本の何を紹介したいかというと、当然日本の食文化の中心である京料理をはじめとする日本料理だろう。

さまざまな料理ジャンルが同じ土俵でしのぎを削る、日本のマーケットの特殊性を(例えばイタリア料理店だけで1万件以上もある上、しかもほとんど日本人が作っているなんて他の国では有り得ない話だ。)外国人が理解するのは不可能に近いと思う。

日本におけるイタリア料理店なんてイタリア以外の他の国からはあまり相手にされない。日本料理店からも。と思って白状すると先日のミシュラン以来少しへコんでいる。まぁそんなこと言っててもしょうがない。真似ではない独創性を大事にして自分なりの食文化をきっちり提案して行きたい。負けない料理を意地でも作るぞ(興奮)メラメラ

さて、ワークショップにはデンマークのスーパースター、ルネ・レセッピ、フィンランドのハンス・ヴァリマキ、アメリカからカリフォルニア料理のダヴィット・キンチ、同じくアメリカからマイケル・シムラスティの4人のシェフがデモンストレーションを行った。

その前日まで約1週間彼らはそれぞれ瓢亭や菊乃井、美山荘などで日本料理の基本研修を行い、市場を研究したり、昆布を学んだり、柚子を始めとする様々な種類の食材に触れ、ハードスケジュールをこなしたと聞く。その経験をベースに、最後の発表会という形のデモンストレーションだった。京都で骨董をたくさん扱う食器屋の梶さんの食器を使い、彼らの感性と日本料理を融合させる試みだった。感心したのは、彼らは旅費は自腹で来ていたり、超多忙なトップシェフに関わらず、時間を割いてまで招待に応じるなど好奇心が旺盛で吸収力があり、貪欲である事だ。様々な日本の食材を完璧に使いこなしていたとは僕には思えないが、日本料理を知らない人からしたら、それなりの解釈だと思うかもしれない。

本当にたくさんの料理人とジャーナリストの方々が来ていて、久しぶりに会えた人もいて挨拶しまくりだった。村田さんに「今時醤油も味噌も使わへんのはお前くらいや」と言われた。確かに、他の国に行けば何料理と名打つ店はほとんど無くて、ただ誰々の店とか店の名前だけ書かれているだけが普通だ。だから彼らは色んな国の調味料をさかんに使う。(日本料理の出汁まで使う人も増えてきた。しかし日本において僕たちが出汁を駆使して醤油や味噌に味醂などを使いこなしたとしたら、それはもはや日本料理になってしまうだろう。)僕は調理には国籍や壁は無いと思う。だから最適調理をめざす。だが、調味料や味の嗜好性には国籍やつくり手の好みや歴史が大きく反映されるべきだと思っている。
自分の中でイタリア料理という制約を設けているもう一つの理由は、フィールドを少し限定することで、迷わずクリエイティブに仕事を行うためだ。世界の料理はどんどん近付いていて、大きな流れの中ではおそらく同じ方向を目指していると感じる。日本でイタリア料理の看板をあげることに意味があるのか、自分の立ち位置がどこにあるのか、結構考えさせられた1日だった。


~追伸~

この数日お誕生日おめでとうメールや熱心に見ていただいている読者のみなさんからコメントを頂いて本当に感謝感激しております。みなさんの返事を書けなかったりするけど、一つひとつのコメントが励みになり、幸せです黄色い花頑張んなきゃと思いますビックリマーク