前回では、感電の被害を左右するのは電圧、電流、周波数だと説明しました。しかし、感電したとき受けるダメージを左右するのはほかにもあるのです。それに加えて、どのようにしたら感電事故を防ぐことができるかをお話しましょう。
●心臓を通ると致命的
前回でも少し触れましたが、心臓を電流を通ると0.1ミリアンペアというわずかな量でも心室細動を起こします。ご存じのように、心臓には心室と心房があります。心房は血液が入って来る場所、心室は体全体に送り出す役目をしていますが、心室が細動を起こすと小さくブルブルと震えるばかりで血液を送り出すことができなくなるのです。その結果、心臓が停止してそのまま死に至ることもあります。
では、どこを電流が通ると心臓に影響を与えるのでしょうか。感電した場合、専門的には入電部位、出電部位という用語を使います。つまり、どこから電流が入り、どこから出ていったかを示すものです。電気工事の作業中に感電した場合は手から入電するケースが大半です。そして、同じ手から出て行けば被害はそれほど受けません(電流が小さい場合は)。同様に、右足から左足(またはその逆)に通じたときも被害は小さいと思っていいでしょう。
その点、手から胸に出て行くと危険です。胸と背中に通るともっと危険です。心臓があるのは胸ですから、その部分から遠いところを通れば被害は少ないということです。
●時間が長いと電圧が低くても危険
二番目に取り上げるのは通電時間です。つまり、体を電流が通っている時間のことです。短ければ被害は少なく、長いと大きくなります。つまり、低い電圧でも長い時間感電していると危険な状態となります。
感電していることが分かっているのにどうして感電状態を続けるのかというと、もちろん理由はあります。これも前回紹介しましたが、20ミリアンペアの電流が通るとケイレンを起こして動けなくなります。意識としては離れたいのですが、体が動かないのです。その結果、長い時間感電することになります。また、無条件反射によって手が勝手に電線(または電流が通じている金属部分)を握り込む場合もあります。
このとき注意しなければならないのが二次災害です。感電してケイレンを起こしている人を見つけて助けようとし、うっかり触れてその人まで感電することが珍しくありません。一刻も早く助けなければいけないのは分かりますが、どこで感電しているかを見極めた上で行動しないと被害者が増えてしまいます。
電気工事従事者の間では、ドロツプキック(飛び蹴り)をしたり、裏拳(拳を握って手の甲で突く技)で打撃を加えると助けることができるという言い伝えがあるようですが、これは間違いです。試してみようとは思わないでください。
反面、電圧が高いとそのショックで跳ね飛ばされ、瞬間的にしか感電しなかったため大事に至らなかったというケースもあります。
●感電を防ぐには
感電したいと思っている人はこの世にはいません(例外はありますが)。しかし、軽微な感電はもちろん、重大事故につながる感電も世の中には存在します。理由の大半は不注意と部品の劣化です。特に、水濡れ状態で家電を操作したときの感電は多く報告されており、調理家電や洗濯機などを使用していて感電した例は枚挙にいとまがありません。人間の体は電気抵抗が弱く(=電気が通りやすい)、特に水に濡れた状態は電流が非常に通りやすいとされています。
したがって、湿気や水気が多いところでは電化製品を使わないというのが原則なのですが、調理家電、洗濯機はそういうわけにはいきません。くれぐれも注意してください。
劣化した部品とは主に絶縁体を指しています。電流が定められた回路の中を通っている限り、問題は生じません。家電として安全に機能します。ところが、絶縁体が劣化すると導流体のさまざまなところに流れてしまいます。こうなると、金属部分に触れただけでビリッと感電する可能性が高くなります。これが漏電です。電流が洩れて、通ってはいけないところを流れている状態です。発見すればすぐに交換・修理する必要があります。
●まとめ
感電被害には電圧、電流、周波数だけではなく、入電部位や通電時間が大きく影響していることを紹介しました。便利だけれど恐ろしい電気を使いこなすには必ず知っておいてほしい知識です。便利で快適な生活を送るために電気には十分注意してください。

