バフェットは誰の目にも成長が確実な業界をスルーしてきた
ウォーレン・バフェットは世界で最も成功した投資家として知られていますが、彼は1910年第の自動車産業、1930年代の飛行機、1950年代のテレビなど、誰の目にも成長が明らかな業界だと認識しながらも投資しませんでした。
その理由はなぜでしょうか?
バフェットのことをよく知っている投資家なら成長が明らかでも株価が割高だったから買わなかったと予想するかもしれませんが、違います。
バフェットは、これらに投資しなかった理由として「今後数十年の利益予想が立てやすい企業に限って投資をしています」と語っています。
この判断は賢明であり、実際多くの企業が過度の競争に晒され消えていきました。
1900年代前半の話はピンとこないかもしれませんが、液晶テレビの例なら比較的記憶に新しいのではないでしょうか。
重たくて場所を取るブラウン管から、薄くて軽い液晶への変化は革命的であり、家電量販店は買い替え需要で盛り上がりました。
しかし、結局明確な勝者と言えるような、大きく儲けるメーカーは出てきませんでした。
むしろ日本の家電メーカーは価格競争で疲弊していきテレビ事業からの撤退、縮小を余儀なくされました。
成長分野が成長企業を生むとは限らないのです。
「利益予想しやすい企業に投資すること」こそバフェット投資の神髄
ウォーレンバフェットの最も賢明な点は、ここにあると私は考えます。
いくら成長の見込みがあっても「利益予想」が難しい事業には投資しない。
そして利益予想が容易な業界に投資する。
バフェットが「理解できるものしか投資しない」というのはよく知られていると思いますが、その理由こそ、理解できるものでなければ「利益予想」が成り立たないからです。
彼はシーズキャンディーへの投資について以下のように語っています。
私の仕事は自分が理解できるものが存在する領域をよく見ることです――私はアイク・フリードマンの宝石店については理解できます――それからめぼしい企業の今後の一定期間における現金収支、すなわちキャッシュフローがどうなりそうなを見積もります。シーズ・キャンディーズ(バークシャー参加の菓子製造販売会社)の場合もそうしました。
その分野を理解できるかどうかは、前提条件でしかありません。
その業界の成長性が間違いないと思っていても、利益を予想し辛いと感じていれば、バフェットにとって投資不適格となります。
その企業の将来利益を予想し易く、株価が将来利益に対して十分割安だと判断したときだけ、バフェットは投資するのです。
純粋な製品パフォーマンスの競争であれば、どれだけシェアが確保できても値下げ競争が激化すれば赤字化もあり得ますが、Appleの場合は、シェアに応じた収益を皮算用することができます。
利益予想のしやすさは投資家にとって必要な視点か?
バフェットが投資を避けた自動車業界でもトヨタやホンダに投資していれば大きな利益を得られました。最近であればマスク氏のテスラに上場時から投資していれば比較的短期間で莫大な富を得られたでしょう。
トヨタやホンダが自動車の本場アメリカの企業を打ち破り世界トップクラスの自動車会社になると上場初期に予測できた人などほとんどいないでしょう。テスラについても、既存の自動車メーカーにEVで割って入るだけの実力があるか、懐疑的な意見が多かったように思います。
これらの企業に上場初期に投資していれば一般的な生涯年収を超える収益を得られたでしょうが、予想しやすさを重視するなら、これらの株で大きく儲けることはできなくなります。
株式相場では稼げたかどうかが全てなので、「利益予想のしやすい銘柄にのみ投資する」というのは唯一の正解ではないでしょう。
しかし、世界一成功した投資家が実行していた投資法であるという事実を軽く見るべきではありません。
特に企業価値と株価の乖離を重視するバリュー投資や、配当重視の投資法などの場合は、重要な視点になると考えられます。
あなたがもし、投資対象の評価シートのようなものを作っているなら、その中に「将来利益の予想しやすさ」という項目を作るのも良いでしょう。
予想のしやすさというのはバフェットが見つけた「エッジ(優位性)」であり、彼はそれを利用して億万長者になったのですから。

