僕の話に呆然としている三島をそのままにして私は、先を続けた。僕がアメリカに行きあとは、年月が過ぎそれで全てが解決するはずだった。横浜の施設から、彼女が姿を消すまでは。まさか三島の病院に保護されているとは。私は三島に自分がした事を話す時が、来ている事を悟った。いつか、真実を話さなければと、思っていたが、今日まで話せずにいた。その事をすまないと思っている。僕の話を黙って聞いていた三島が口を開いた。「奥田、僕が保護した彼女の本当の名前を、教えてくれないか」「彼女の本当の名前は藤崎麻巳子(ふじさきまみこ)と言うんだ。」「じゃあ、今日で彼女をアリスと呼ぶのは、もう、おしまいだな。こんなに素敵な名前があった事が、わかったのだから」それから少し微笑むと「なあ奥田、お前、麻巳子さんに弟が、いた事を知っているか?」僕が首を横に振ると「松島君だよ」「でも、名字が違うじゃないか」「あの後、麻巳子さんのお父さんはすぐに病気で亡くなり、一人になったお母さんは、実家に戻って旧姓の松島を名乗る事になった、その後松島君を東照大学医学部に入れ医者にした。でも、その事を知っているのは、教授只一人だけだった。僕は、あるルートから内密に調べて、この事を知った。」「だから、お前は教授の手術の時に松島君を第1助手に、したんだな。」「それだけじゃない、教授の手術を、引き受ける時、ある取り引きをした。それは、松島君を僕の病院に預からせて欲しい。そして、時が来たら、東照大学病院第1外科の教授に、して欲しいと。教授も彼のお兄さんの事を知って、胸を痛めていたので快く了承してくれた。」今度は、僕が呆然とした。「もちろん、奥田も松島君に色々、教えてくれるんだろ?何と言ってもアメリカ帰りだからな。」大学時代のような、拳が僕の分厚い胸板で、ドスンと、音を立てて響いた。その後、「井上君、あの廊下の突き当たりの使ってない、病室綺麗な部屋に、リフォームしたいんだ。誰か良い業者さん知っている。」「はい。でも、その部屋誰が、使うんですか?」「アリス。いや、藤崎麻巳子さんだよ」事情が、まだ良く飲み込めていない井上君に、楽しそうに説明をする三島を見つめ、僕は、この病院は、この世の中を浄化する、最期の砦ではないのかと思った。 (完)