緊急事態宣言の発令により5月の定期演奏会は誠に残念ながら中止となってしまったため、4月以来となる定期演奏会が無事開催されることになりました。
 
大フィル一同、演奏会が再開できることを心から嬉しく感じでいます!
 
 
第549回定期演奏会
 
6月25日(金)午後7時開演
6月26日(土)15時開演
 
フェスティバルホール
 

芥川也寸志/弦楽のための三楽章トリプティーク

ブラームス/ヴァイオリン協奏曲 ニ長調作品77

ショスタコーヴィチ/交響曲第1番 ヘ短調作品10

 

当初出演予定でした沖澤のどか氏(ベルリン在住)、コリヤ・ブラッハー氏は海外からの入国制限により出演不可となりました。

 

 

今回の定期演奏会に向けて、まずは指揮者大山平一郎氏にお話を伺いました。
 
※会話部分の語り手は、敬称を省かせていただいています。
 
 

宮田  「今回の定期演奏会について、マエストロの思いをお聞かせいただけますか?」

 

大山  「まず、芥川也寸志のトリプティークなんですが、僕は室内オケの奏者でありながらこの作品を演奏したことも指揮をしたこともなかったんです。

 

そしてショスタコーヴィチの交響曲第1番はアメリカで何度か指揮をしたり、ヴィオラ奏者として演奏した機会もありますが日本ではなかなか演奏されない作品ですよね。

ショスタコーヴィチがまだ若い頃の作品は戦争や政治的要素ほとんどなく、新人作曲家としてストラヴィスキーやマーラー、リヒャルト・シュトラウス、ワーグナー、師匠であったグラズノフの影響を受けて描いたということを、この交響曲にも感じます。

 

また、ベートーヴェンの第9の約5年後にベルリオーズの幻想交響曲作曲されたことを考えると時代は繰り返される、というか、

前の作曲家の影響を受けつつも進化していく、という要素も感じますね。

 

今回は代役ということでお受けしましたが、この機会をとても幸運に思っています。」

 

 

宮田  「指揮者とヴィオラ奏者の両方でご活躍されていますが、その2つは何か違った捉え方や、区別しているところはありますか?」

 

大山  「それは同じ音楽ですから、特に分けて考えていません。ただ、指揮活動を通してスコアの見方が一層深まり、それと同時に室内楽奏者として内声(※室内楽やオーケストラの弦楽器では、第二ヴァイオリンとヴィオラパートが受け持つ中音域)をやってきたことも重なり、より多くのことを学べいることを幸せに感じています。初めは親の勧めで始めたヴァイオリン、それがあってこその今なので、感謝しています。」

 

宮田  「今回のソリスト金川真弓さんとは共演されたことがあると伺いましたが、それはどのような機会でしたか?」

 

大山  「東京のシャネル本店の4階にあるネクサスホールで写真の展示と演奏会ということをやっていて、僕はその室内楽演奏会のディレクターを2006年からやっています。彼女にはそこに何度かお越しいただき一緒に演奏しました。4年ほど前だと思います。

その前にも、僕が指揮を始めた頃にロサンゼルスのサンタモニカにある学校で、青少年のための弦楽合奏に参加してくださっていました。そのメンバーが後に、シカゴ交響楽団やのソロコンマス1人、ニューヨークフィルのコンマス3人のうちの2人、になられて、とても優秀なグループでした。」

 

宮田  「リハーサル2日目を終えて、今回の大フィルはどのような印象ですか?」

 

大山  「少し期間が開いて久しぶりですが、昨日はどう料理するかという基本的なところをやって、昨日から今日でとても変化したと思って、とても嬉しく思います。

僕がどう思うかというより、作曲家の意図を探すことは最も重要だと思っています。

僕が奏者として演奏時に感じるのは、それがいかに指揮者から奏者に合理的に伝わるかどうか。それがあれば自然と1つのところに集まれますよね。

音を出しているのは指揮者ではない、オケや室内楽奏者としても指揮者としても活動してきたことでよりそう思うので、固定観念に偏らず、あくまでメンバーの皆さんと共に良いものを作りたいなと思います。」

 

宮田  「マエストロのその思いや考え方は、楽員にもリハーサルを通して伝わり、寄り添ってくださっていることを感謝しています。」

 

大山  「ありがとうございます。」

 

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ショスタコーヴィチ交響曲第1番には、チェロのソロが多く描かれています。

 

今回ソロを演奏するチェロ・トップ奏者近藤さんにもお話を伺いました。

 

宮田 「ショスタコーヴィチの残したチェロ協奏曲は第1番作品107、第2番作品126と今回の交響曲第1番作品10とは大きく離れた時期に描かれていますが、今回ソロを弾かれて、チェロ協奏曲やその他の作品と比べてどのように感じますか?」

 

近藤  「チェロ協奏曲は、激しく情熱的な部分に対して、コントラストのある大変美しい旋律が現れ、今回の交響曲のソロパートでもチェロtutti(テュッティ:ソロパート以外)の豊かなハーモニーの中で高音域で歌う旋律を描いています。

 

若き頃に描かれた作品でありながらも演奏をしながら、抒情的なところを美しく歌わせることにおける彼の才能をとても感じます。

 

また、僕は井上道義さんと過去に大フィルで演奏させていただいたんですが、交響曲第15番第2楽章にも金管楽器のコラールの後にチェロの独奏があり、神がかって美しいです!」

 

宮田  「ショスタコーヴィチは、チェロの音域を最大限に活かした旋律が、数々の作品に描かれていてチェロの使い方がとても魅力的だなぁと思います。色々伺えて、より分りました。交響曲第15番も大フィルでまた演奏できるとよいですね!」

 

 

◎リハーサル3日目の休憩中、マエストロ大山平一郎氏と、チェロ・トップ奏者/近藤浩志氏、客演首席奏者/井野邊大輔氏

 

 

 

 

文責:宮田

 

 

大フィル公式HPにも掲載されたメッセージを楽員ブログにも掲載させていただきます。

 

 

大山平一郎氏からお客様へメッセージ

 

名曲と定評ある作品は、作曲家が大成してから書かれた曲であることが多いのは、否めません。しかし、名曲を生んだその源である作曲者の精神的信条や書法がどのように形成されていったかを理解するには、作曲家の若いころの作品を知る必要があります。特に、政治に大きく影響される以前のショスタコーヴィチを知る事が出来る交響曲第1番は、興味深い、貴重な秀作です。

 

芥川也寸志先生の弦楽のための三楽章の楽譜は、アメリカで初演され、その後ソビエトで楽譜が出版されました。日本人作曲家の曲が国際的に注目されるようになった1950年代を象徴するような作品です。

 

私は、京都で生まれ育ちましたが、弦楽奏者、指揮者として学び、成長させていただいた場は大阪が中心でした。今回のプログラムはドイツ圏作曲家の作品を指揮する機会が多い私にとって、まれな要請でしたが、私の違う側面を見いだしていただける機会だと、気合が入っています。同時に、長い間お世話になってきた大阪のお客様の期待に応えたいと、強く思っております。