第547回定期演奏会、バルトークと吉松隆について

Vol.1のモーツァルトにつづいてVol.2では
 
B.バルトーク:管弦楽のための協奏曲と
吉松 隆:朱鷺に寄せる哀歌
について尾高さんにお話を伺いました。

バルトーク:管弦楽のための協奏曲について

尾高「バルトークの管弦楽のための協奏曲
(以下、オケコン)については若い頃にはたくさんやったんだけど、最近は少し離れていてもう振る機会もないかな。と思っていたんだけど、
去年コロナで外国人指揮者が日本に
入って来れなくなって、東京交響楽団で
急遽振る機会ができました。
その時の演奏をオンエア(※1)で聴いていた大フィル事務局の山口さんが、『是非大フィルでもやりましょう』と声をかけてくれた事もあって

今回のプログラムに取り入れました。」

尾高「もう一つ、札幌交響楽団に赴任する直前にもこの曲をやったんだけど。
ルイ・グレーラーさんって覚えてる?」
井野邉「日本フィルの」
尾高「そう、日本フィルの元コンマスでアメリカ人の...めったに人を褒めない人だったんだけどね。
その彼がリハの後に『尾高くん。いいよ』って言ってくれたんだよね。
で、よくよく聞いたら彼はクーセヴィツキーの指揮でオケコンの初演を弾いている。だからバルトークのオケコンのついては、とても詳しいと。そして、彼は僕に『あなたのはヨーロピアンスタイルでないところがとても素晴らしい』と言うんだよね。」
尾高「これはね、今度のリハーサルで楽員の皆様にも伝えないといけないのだけれども。
ハンガリーという国は日本に近くて。言葉も似ている。
ハンガリーの人からするとヨーロッパは西側の国であって同朋に日本などのオリエンタルなものを感じる。
僕たちが勉強する時、どうしてもバルトークやリストなど、ハンガリーの人もヨーロッパとしてひとまとめに捉えて一緒くたにしちゃってる。」
尾高「それを一番教えてくれたのが齋藤秀雄先生で...『言葉を勉強しろ。ベラ・バルトークなんて言ったら大間違いなんだぞ。』とね。」(※2)
尾高「そのことをこの間、東響でやったときにすごく思い出されて...
だから、大フィルでもきちんと日本語的な。
ちょっと関西弁かもしれないけど。そういうアプローチをもって。。。
良いオケコンになることを期待しています」

※1 2020年9月に東京交響楽団との同曲の演奏がニコニコ生放送で放送されました。

※2 ハンガリーでは日本と同じように名前を
性→名の順で表される。

吉松隆:朱鷺に寄せる哀歌について

尾高「大フィルに赴任してから
日本人作曲家については絶対に取り組むべきだという思いを持っていまして。
今までに藤倉さんや三善さん武満さんといった
日本人作曲家に取り組んできました。
この3人にはそれぞれ、世界を席巻した凄さがあるのですが
吉松さんは、そういう凄さとはまったく違うところにあるんですが、
この一曲を聴けば多分一生残るだろう。
というのが、この朱鷺に寄せる哀歌。」

尾高「吉松さんはすごく素敵で面白い人なんですが
朱鷺が絶滅するかもしれない。と言う時に
本当に悲しまれて。その思いを音にされた。
実は、奏者の配置も朱鷺の翼を表現しているんですよね。
ピアノが真ん中で胴体。
コントラバスが朱鷺の尻尾なんですね。
曲も本当によくできていて。
ピアノのソロもあるのですが本当に美しい。」

尾高「実はジュリアードで学生と一度この曲をやったことがあるんです。その時は全て日本人作曲家の曲をやったんですが。
ジュリアードの学生が一番口ずさんでいたのが
この朱鷺の歌のヴァイオリンの旋律でした。
僕がエレベーターに乗ろうとすると
上の方からこの音が聞こえてきて。
学生たちが歌ってるの。
それで、彼らが
『マエストロ!これは、なんとも泣けます!』
なんて言うんですよね。
日本人の作った曲だけど、やっぱり
伝わるんだなぁ。と思いましたね。」

尾高「意外と日本でも最近は演奏されていないので、
この機会に是非楽しんでいただきたいですね。」

 

文責:山田俊介