先日2/8(月)にフェスティバルホールで
『フェスティバルホール音響体験スペシャルツアー』という催しがありました。
 
音響学の専門である下倉良太さん、加藤浩介さんのお二人による専門家から見たフェスティバルホールについてのお話しもあり
先着100名様が現地で参加され、また一部はライブ配信という形でこの公演を覗くことが出来るなど、色々な視点でホールを知るのは私たちオケマンにとっても興味深い内容です。
 
それでは、この企画の演奏者としてご出演されたチェロトップ奏者の近藤浩志さんにお話しを伺ってみたいと思います。
 
 
〜今回で2回目のご出演だそうですが、これはどういう企画なのでしょうか?
 
[近藤]
この企画はフェスティバルホールの音響の素晴らしさを普段からフェスティバルホールを愛されている方々にさらに理解を深めて頂きたいと言う思いから生まれたものです。
 
 
世界中のホールの音響や設計を研究されている専門家の方々のお話を聞かせていただくことも楽しみなのですが、何より目玉は、
普段はチケットを買って演奏会に行くとなると、その買った一席にずっと座るのが当たり前なのですが、
この音響体験では、一階の前と後ろ、二階、三階と聞く場所を移動していただき、
その都度、奏者の私が同じ場所で同じ曲を演奏すると言うパターン①と、
 
一階の1番良い席にお座り頂き、今度は奏者の私が舞台の最前部、中央部、最後方部、そして最後部の1番右端で演奏するパターン②があり、
 
いわば聞く場所と演奏場所を変えに変えてフェスティバルホールの響きを素晴らしさ、また各場所での響きの違いを体験するめちゃくちゃ贅沢で興味深いコンサートなのです。
 
〜この企画にいらしたお客様はどういう方々がいらっしゃっていたのでしょうか?
 
[近藤]
やはりフェスティバルホールをはじめホールのいろんな場所での響きにご興味がある方だと思いますし、今後のお席をお選びになる時の参考にしたいとお考えの方もいらっしゃるのではないでしょうか?
 
 
〜広いステージでお一人で演奏されるのは、オーケストラで演奏するのと、どこが違いますか?
 
 
[近藤]
そうですね、いつものソロと比べればもちろん贅沢なフェスティバルホールの響きを感じて気持ちの良いものなのですが、
毎回の定期を始め沢山のオケの曲をここで弾かせて頂いてきている観点からの違いを考えると、やはり普段はチェロセクションとしての響を感じながら各楽器とのアンサンブルをしていく中でのホールの音を聞いているので、なんとも寂しい感じがしますね。
反対にいつもどれほどセクション一人一人の音がホールに響いているのかがわかりました。
 
 
 
 
〜演奏するにあたって、いつもより気にかけていた事などありますか?
 
[近藤]
そうですね、お客様の距離が近い時はより生っぽい音にならないように、離れていけばいくほどそこまで到達する遠鳴りする音で。。
と言うことを普段は考えたりするのですが。。
 
今回は全くしないで同じに弾くようにする事がかなり難しかったです笑笑
 
〜近藤さんにとってもフェスティバルホールは親しみのあるホールだと思いますが、今までで印象に残っている公演はありますか?
[近藤]
そうですね。どの公演も思い出深くて忘れられないのですが。。。
 
幼い時に母がオペラに出て楽屋に行った時、朝比奈隆先生に抱っこされたり頭をポンポンされていた楽屋廊下に自分が大フィルに入団してからチェロを抱えて入った時に、え?こんなやっけ?と目を疑いましたね。
改装前は天井も低いところもあって大人になったからかとても小さく感じました。子供の頃に座っていた大きな椅子もキューキューに、あ、それは私の横幅が増えたからか笑笑
 
自分が弾いて思い出深いのは500回記念のミサ・タンゴ。三浦一馬くんとのチェロソロの掛け合いは痺れました。
そして尾高音楽監督2年目の開幕のマーラーの9番は本当に忘れられない。最後の数小節で天国へ繋ぐチェロソロ。。その役割を果たして、あぁオケやってて本当に良かったって思えた本番の一つです。
 
そして、コロナに負けずに一丸となって頑張っている大フィルとして思い入れが半端ない先日の二月定期のブルックナー9番。
朝比奈隆先生の最後の定期でも演奏させていただきましたが、今回の演奏は本当に忘れがたい演奏になったと思います。数カ所出てくるチェロセクションのソロは今までで最高の音がしたと思っています。みんなのこの曲にかける想いが後ろからとても伝わってきて本当に幸せな本番でした。
フェスティバルホールは本当に素晴らしいホールだと思います。ソロで弾いてもどの席にもその音を美しく、そして輝かしく響かせると思います。
しかし、やはりこのホールに相応しいのはフルオーケストラの響き!!
 
まさしく大阪フィルの響きが最も相応しいと私は感じています。
 
ホールも楽器です。
楽器をフルに鳴らせる奏者が必要なように、素晴らしいホールにもフルに鳴らせるオーケストラが必要とされるのではないでしょうか?
これからも皆様にも、そしてフェスティバルホールにも必要とされる大阪フィルの響きの一人として頑張っていきたいと思います。
 
 
〜近藤さん、たくさんお話し頂きありがとうございました。
 
blogを読んで下さった皆様にも
『お読みいただきありがとうございました。近藤浩志』 とメッセージを頂きました。
 
 
 
インタビュー・石田聖子