2月12日13日定期演奏会は、当初出演を予定していましたアンヌ・ケフェレック氏が、外国人入国制限のため来日不可となり、代わりまして北村朋幹氏が出演いたします。

曲目は変更なく、モーツァルト/ピアノ協奏曲 第24番 ハ短調 K.491です。

 

ピアノ 北村朋幹さん

 

リハーサル後に、北村朋幹さんにお話を伺いました。(前編)

 

―――今はベルリンにお住まいなんですね。

 

北村:はい、2011年からベルリンに住んでいますので、これで10年目ですね。

10代の頃から海外に住みたいなと思っていて、ずっと作曲が好きでフランスも良いなと思っていたのですが、やっぱりピアノも学びたいし、結局、沢山演奏が聴ける街ということと、ご縁もありベルリンに住む事になりました。留学した1年目は毎日のように演奏会に行ってました。オペラやオーケストラの公演も。

今はベルリンに住みながらフランクフルトで古楽器の勉強もしていますが、都市間を移動できなくなってしまい授業もオンラインになったので、昨年末から帰国し国内で演奏会をしています。

 

―――最初から今のお家に住んでいたのですか?

 

北村:最初はピアノがない物件に住んでいたのですが、学校だと2時間練習するために6時間待ったりだとか大変でしたのでピアノが弾ける物件を探していたら、今のノイケルン・ベルリンというトルコ人が多い地域に行き着きました。

 

―――えっ!?ケバブが好きなの?(笑)

 

北村:いやいや、そうじゃないんですが(笑)でもケバブ屋さんの隣に、またケバブ屋さんだったりしますよ。

 

―――この辺の、たこ焼き屋と一緒やね(笑)

 

―――高校を卒業されてすぐにベルリンに?

 

北村:1年間だけ芸大に行ってその後ベルリンに行きました。芸大の最初の方のレッスンで先生(伊藤恵さん)に「あなたは芸大を卒業するまでずっといる気はないよね。留学先を早く見つけないとね」と最初から理解してくださったのはとてもありがたかったです。

 

 

―――古楽器を学ぼうと思ったきっかけは?

 

北村:う~ん、何でしょうね…色々言えるけど、でも理由は後付けになっちゃうかもしれませんが、ヴァイオリンだと佐藤俊介さんが古楽演奏を始められた頃の演奏を聴いた時に凄く衝撃を受けて、それ以来ブリュッヘンやアーノンクールに憧れていましたが、自分で演奏すると考えたのは、もう少し後でした。

 

―――ブリュッヘンやアーノンクールに影響受けるピアニストって珍しいよね。僕らの中では普通だけど。そう言った意味でも、より広く音楽に興味があったというか、作曲が好きな事も納得できるし、今回のリハーサルでもオーケストラの事を理解していらっしゃるのが凄く分かる。

 

北村:オーケストラの曲を聴いたり、スコアとか眺めるのが本当に好きだったし、ピアノはオーケストラに入れなくて残念だなと10代の頃はずっと思ってましたし…

 

―――それは、指揮者になるんじゃない?完全に指揮者の道じゃない!(笑)

 

北村:まぁ、まぁね。10代の頃は指揮者も良いなと思ったこともありましたが、年を経るごとに、だんだん自分の事も分かってくるじゃないですか。協奏曲などで協演させていただくと指揮者って人の前に立って何かをしないといけなくて、これは自分に向いてないなと(笑)

 

―――まあな、指揮者ってな、大変やろな。

 

北村:勿論、やってみないと分からないと思いますが、自分の性格的にどうかなと。そうとうなメンタリティも必要だなと。そのメンタリティと自分の音楽への愛とのバランスが崩れてしまうのが嫌だからというのはあるかもしれません。

ほんとコンチェルトに関して言えば、どんな大きな曲でも、大きな室内楽と捉えられた時が一番幸せなので。

 

―――そうか、だからオケともマッチする演奏だよね。なんか良いなって。音色とか音楽の作りとかだけじゃなくて、オケとの一体感というか、オケも自然と音の方向性が整っていくというか。

 

北村:実はコンチェルトは一番緊張するジャンルでして、初めましてのオケの方々の前でとても限られた時間の中で演奏するので、とても難しいと思っています。バーンと弾いて俺についてこいみたいな方のほうが上手くいくのかもしれないですけど、自分はそういうタイプではないのでいつも緊張します。ですが楽団員の方々にそう言っていただけて嬉しいです。

 

(後編に続く)