オーボエ 浅川さんご夫妻によるオール・シューマンの二重奏での収録でした。
ピアノの浅川晶子さんからプログラムについてメッセージをいただきました。

シューマン:   3つのロマンス 作品94
      アダージョとアレグロ
      こどものためのアルバム 作品68

オーボエ  浅川 和宏
ピアノ   浅川 晶子


今回はロベルト・シューマン(1810−1856)のオーボエ作品を聴いていただきたいと思います。
シューマンはドイツロマン派の代表的な作曲家ですが、この時代のオーボエのために、数少ないオリジナルの作品を残してくれた希少な作曲家でもあります。

「子供のためのアルバム 作品68」は1848年、長女マリーの7回目の誕生日のために作曲した数曲に端を発し、その年の12月には全容がまとめられて出版に至りました。
シューマンは「これらの曲を書いているときほど、音楽的に自分の気持ちがのっていたことはありません。流れるように出てきたのです。」と友人に宛てて書いています。
大作のオペラ「ゲノヴェーヴァ」と並行しての作曲だったので、自然にそのような言葉が出たのでしょう。子供の練習という実用性と、芸術性とが両立した優れた作品集として今日に至るまで弾き継がれています。
きょうは一番最初に、オーボエとピアノ版で第1曲の「メロディ」を演奏いたします。


「3つのロマンス 作品94」は革命による混乱から避難していた一家がドレスデンに戻り、意欲的に作曲をしていた頃のシューマンが、1849年に妻のピアニスト、クララにクリスマスプレゼントとして贈った作品です。
クララは年内にヴァイオリニストと共にこの曲を初演しましたが、翌年にはオーボエ奏者とともにこの曲を演奏しています。
「速くなく」と指定された第1曲はイ短調とハ長調の間をたゆたう繊細な曲、「素朴に、親密に」と書かれた第2曲はオーボエの伸びやかさが魅力的、再び「速くなく」との指定のある第3曲はオーボエとピアノのユニゾンが多くを語っているようです。大変に美しい作品ですが、実はオーボエのレパートリーの中では難曲として知られており、ロマン派のオリジナルのオーボエ作品としては孤高の存在です。


「アダージョとアレグロ 作品70」はもともとホルンとピアノのために作曲されました。
1848年、相次ぐ革命と政情不安の中、シューマンは様々な楽器の組み合わせで実験的な作品を書き続けていましたが、この作品は新しく普及し始めたヴァルヴ付きホルンのための作品として生まれました。
シューマン自身の手になるヴァイオリン版、チェロ版が残されていますが、今日ではそのほかの楽器でもよく演奏されます。最初のアダージョには「ゆっくりと、親密な表情をもって」、後半のアレグロには「速く、情熱的に」と指定があります。この曲もクララがホルン奏者と初演しています。

最後に、ふたたび「子どものためのアルバム 作品68」より、表題がなく代わりに「***」と書かれた作品を演奏いたします。


この時代、オーボエはオーケストラの中の楽器として使われることが多く、多くの作曲家はオーボエのためのソロ作品を残しませんでした。その中にあって、シューマンのこれらの作品は大変貴重で、浅川はライフワークとしてこれらの作品を演奏し続けております。2015年にはCD「浅川和宏オーボエリサイタル 〜イギリス・ドイツ作品集〜」(ROCD-0001)にも収録しております。現在の演奏はまた少し違ってきているかも知れません。




ご視聴くださった皆さま、どうもありがとうございました。

ピアノ 浅川 晶子