今回はチェロ・トップ奏者である諸岡拓見さんにお話を伺いました。

 

チェロ・トップ奏者

諸岡 拓見さん

楽器歴:26年

入団年月:2017年1月入団

2010年同志社大学入学後、京都大学交響楽団でオーケストラに親しむ

 

 

 

 

宮田:「今日はインタビュー時間を作ってくれて、ありがとう。宜しくお願いします~」

 

諸岡:「こちらこそありがとうございます。宜しくお願いします!」

 

宮田:「楽器を始めたのは何歳のころで、どんなきっかけだったのかな?」

 

諸岡:「始めたのは4歳でした。母がピアノをやっていて音楽が好きで、従姉がヴァイオリンをスズキメソードで習っていて、きっかけはそこにありました。僕がその当時住んでいた名古屋の家の近所にヴァイオリンとチェロを習える教室があって、僕はチェロ、妹2人がヴァイオリンを習いました。中高一貫の学校に通いながら高校までその教室で習い、とても素晴らしい先生だったので感謝しています。」

 

 

宮田:「そうだったんだね。東海圏だと角田さん(大フィル指揮者:角田 鋼亮氏)や、クラリネット船隈さんの母校*東海中学高校は、オーケストラ部がとても盛んだけど、諸岡くんの通った学校にはオーケストラ部はあった?」

 

諸岡:「僕の学校には残念ながらありませんでした。周りの子は受験などで小6で辞める人も多く、僕も中学の頃若干反抗期はあったりしましたが、その後部活などにのめり込むということもなかったので、ずっとチェロを続けていました。」

 

宮田:「周りには辞めたりする子もいる中、続いたのはやはりその頃から自然とチェロを好きな気持ちがあったんだね。

ところで、2月末に演奏会が中止になり始め、その頃はどんなことを感じていた?」

 

諸岡:「3月上旬に*東響さん(東京交響楽団)が無観客ライブ配信で行った演奏会や、*京響さん(京都市交響楽団)も長大なワーグナーのオペラをライブ配信されたり、3月後半にアマチュアでは*慶應大学ワグネル・ソサィエティー・オーケストラ(以下慶應オケ)も*カーテンコールでライブ配信など、そういった配信という新しい試みに取り組んだことに注目していました。

 

京響さんのライブ配信は残念ながら見れなかったんですが、東響さんと慶應オケの演奏会をアーカイブで見させていたいだきました。

 

慶應オケは何年かに1度国内演奏ツアーがあるのですが、今年2月に行われた国内ツアーの京都公演では僕が指導に行かせていただいてる*京大オケとジョイントする形で開催し、慶應オケはマーラーの交響曲第10番を演奏していました。

 

3月ライブ配信された公演はその国内ツアーの集大成であり、4回生でオケを去ることになる学生にとっては思い入れの深い本番なので、配信でも行うことができてよかったのではないかと思いました。」

 

宮田:「今までは演奏会をインターネット配信で見るというのは日本国内ではあまりなかった方法だものね。様々なオケが、3月は演奏会の形を模索しながら無観客でやっていたね。」

 

 

諸岡:「そうですね。その頃はまだ先のことはわからなかったので、感染拡大に注意しながら配信という新しい形での演奏会が普及していくことへの期待も感じました。ですが、それと同時にお客様を入れなくとも、オケは大人数が舞台上に集まるため演奏者自身の感染を防ぐことも考えると、演奏会自体ができなくなるのではないかという不安もあり、2つの感情が同時に入り混じっていました。」

 

宮田:「井上道義さん指揮、ライブ配信で行った大フィル3月定期演奏会はどうだった?」

 

諸岡:「カメラ十数台が並び、無観客という演奏会を初めて体験しました。正直初めてのことで恐れる気持ちもあったし、配信という形の演奏会でどのようなアプローチをできるのだろうという新鮮で楽しみな気持ちの両方がありました。

それまで半月くらい演奏会が中止だったので、演奏会ができる喜びと挑戦しようという意気込みも周りの楽員さん方からも感じました。

その演奏会を実際終えてみて面白いなと思ったことは、前半のプログラムは小編成でのハイドンとモーツァルトの交響曲2曲は特に、大きなフェスティバルホールで拍手もなくシーンとしてさぞ緊張感がすごいのだろうと思いましたが、マエストロの明るさもあり、想像していたよりも奏者同士も和気あいあいと舞台上では笑顔も見られたりして、僕はその雰囲気がとても印象に残っています。

無観客での配信の演奏会は、ある意味それぞれのオケのカラーは普段よりさらに出ているのかなと思いました。

その公演を19万人という沢山の方が視聴してくださったのはとても嬉しかったし、それだけ多くの方が色々なきっかけで興味を持ってくれたのは希望に感じました。

もちろん演奏会ができないことは僕ら演奏家にとって危機的状況ではありますが、その中でも新しい発信方法などを開拓しながら音楽、その他文化芸術分野が発展されていくのではないかと思いました。」

 

宮田:「その頃は色々感じながらも諸岡くんは結構ポジティブに捉える面もあったりしたんだね。それぞれのオケが違ったと雰囲気や特色を持っていて、それらを知ることは勉強にもなるし、生の演奏会でも映像でも楽しみ方の1つだよね。

定期以降は悲しいことに、オケが集まることすらできない状況になってしまったけど、どのように過ごしてた?」

 

諸岡:「配信の演奏会以外にも新しい試みとして出てきたリモート演奏なども見るようになり、実際僕も関わる機会がありました。

編成は弦楽合奏で、1人は直接知ってる方、その他はお目にかかったことのない方でした。

この状況下でなく普通なら、もし初対面の方とアンサンブルするとしても必ずリハーサルでお会いして音を出すので、お目にかかることなく一緒に音が重なるのは最初は不思議な感覚でした。

同じ空間にいて演奏するのと同じようには難しく、リモートによる弊害もありますが、知らない方とデータ上で重なるのも僕にとっては面白さもあると感じましたし、それがきっかけでいつか直接会って演奏しましょう!という話にもなりました。

新たな演奏家同士の輪がこのように広がるのも楽しかったです。

演奏家の『新しい音楽との付き合い方』、『発信の仕方』が継続され、それのためのシステムや方法も進化していけば、これから先の音楽の在り方や楽しみ方の選択肢が広がることにも繋がるのではないかと思いました。

チェロに関しては、時間のできたこの機会に自分の演奏を見直し癖を取りたいと思い、昔弾いた曲や、弾いたことのないエチュードを弾いたりしていました。現場から離れた自分を客観的にモニタリングしようと思いました。

でも、世の中や演奏会の再開などについて今後の状況が見えず、それらのことを1度不安に感じると心の健康を保つのも簡単ではなく、

一時期はチェロを演奏する気持ちになれず、楽器から離れた時期もあったりしました。

でもそれはそれでしんどくて、久しぶりに弾いたときはなぜだか涙が出ました。」

 

宮田:「演奏家も人間だから、やはり身体も精神的な健康の両方が大切だものね。そして、離れてみると気がつくことってあったりするよね。」

 

諸岡:「そうですね。僕らはオケが普段通りあるときは有難いことに常に演奏の機会があり、お客様に直接聴いていただける、それは本当に恵まれていたことなんだと実感して、それがなくなった時に演奏家としての自分を保つのは難しいことだと思いました。そして自分はやはりチェロを演奏しているときが1番幸せで落ち着くし、チェロは生涯の友だなぁと思いました。この状況を生かすも殺すも自分次第で自分を見失わないで、仕事が再開しても自分を見つめ直す気持ちを忘れずに社会の中で生きていくことや、純粋な音楽家としての自分が可視化された気がします。」

 

宮田:「諸岡くんは妹さん2人いると話していたけど、妹さんやご両親もなかなか会えなくて寂しいかな?」

 

諸岡:「僕の妹たちは医療関係で、この状況になってからは会っていないですね。妹たちのことやはり心配です。」

 

宮田:「それは大変ね。妹さんたちの無事を祈ってます。」

 

諸岡:「ありがとうございます。なかなか実家にも帰れず両親のことも心配なのと、あと実家の愛犬ミニチュアシュナウザーのベティちゃんにも会いたいです。すごく可愛いんです!」

 

宮田:「こういうときにペットの存在ってだいぶ癒しになったりするよね!」

 

 

 

 

 

 

 宮田:「チェロ以外は何か新しいことやってみたりした?」

 

諸岡:「お菓子作りました!人生で初めて!」

 

宮田:「どんなもの作ったの?」

 

諸岡:「最初に作ったのはバナナタルトで、あとはベイクトチーズケーキ、スコーンとか作りました。スコーンは強力粉、薄力粉それぞれで作ってみたりして。無塩バターと生クリームと小麦粉が売切れてきて、それを探すために5軒以上回ったりしたときもありました。」

 

諸岡くん作、ベイクトチーズケーキ!!↓

 

 

 

 宮田:「色々作ったんだね!すごいね!

今日はたくさんお話聞かせてくれてありがとう!」

 

諸岡:「ありがとうございました!」

 

 

おまけ♬(インタビュー終わりの写真撮影のひとこま)

 

宮田:「ブログに載せる用に写真を撮らせてね。」

 

諸岡:「はい、あ、、僕今実は、、髭があるんです。大丈夫でしょうか?」

 

宮田;「わぁ!それは諸岡くんのイメージにないね、意外!髭は欧米は多いけど、日本は好みが様々だよね。どんな感じかな?」

 

諸岡:「こんな感じです。」

 

宮田:「私はイメージチェンジでありなのではないかと思うよ!」

 

マスクを外すことがないので、諸岡くんの髭を見れる機会もあまりないですが、皆さんのご意見はいかがでしょう?

その答えはきっとマスクというベールに包まれながらも、髭があり続けるか、なくなるか、で分かることでしょう。

 

インタビュー 2020年6月20日 ヴァイオリン宮田 英恵

 

*東海中学高校・・・学校法人東海学園【東海中学校・東海高等学校】は中高一貫の男子校で、東海地方の中でもオーケストラ部(東海学園交響楽団)の盛んな学校としても知名度が高い。音楽家のみならず、林修さんやその他多くの著名人を輩出している名門校。

 

 

*東京交響楽団が3月8日(日)にニコニコ生放送でライブ配信した【観客のいない音楽会】ミューザ川崎シンフォニーホール&東京交響楽団名曲全集第155回Live from Muza!


*京都市交響楽団が3月7日(土)8日(日)2日連続でYouTubeにて無観客ライブ配信を行った【びわ湖ホールプロデュースオペラ】 ワーグナー作曲『ニーベルング指環』第3日『神々の黄昏』


*慶應オケ・・・慶應義塾義塾ワグネル・ソサィエティー・オーケストラ。1901年に創立された日本最古のアマチュア学生音楽団体。


*カーテンコール・・・クラシックに特化したライブストリーミングサービス、アーカイブを提供するサービス。大フィル3月19日(木)第536回定期演奏会もカーテンコールによって行いました。


*京大オケ・・・京都大学交響楽団1916年に創立された学生オーケストラ団体。