「さちこ」


#140novel
雛罌粟を与謝野晶子はコクリコと詠った。フランスではポピーとも言って国旗の赤はこの花が由来なの。中国ではこの花を虞美人草というの。天下を取る寸前だった項羽が次第に味方を喪い四面楚歌となり、最期の戦いの前夜、哀しい歌を詠み愛妾の虞美人が踊る。私も幸子じゃない名前と物語があればなあ。









「黒髪・四季」


#140novel
桜の花びらが貴女の黒髪に纏わりついていた。取って上げようと手を伸ばす迄もなく、初夏の薫風が花びらを攫っていった。風に少し乱れた黒髪を梅雨の雫がこぼれて行った。夏の日差しが髪を乾かし、仲秋の月が黒髪に艶を添えた。紅葉が髪に色を加え、さらに雪が黒髪に降りかかるが時を置かず溶けていく。








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ある方からお題をいただいたのですが、それが女性の名前、「さちこ」「よしえ」「なおみ」で、漢字でも仮名でもいいとのこと。



なので、だい。が140字小説の創作で女性の名前がこれから出てきますが、けっしてだい。の青春を彩った女性の名前だというわけではありませんので、あしからずww




これは結構難しいですね。



「さちこ」は、決して華やかとは思われない名前。一方、雛罌粟(ひなげし)は、その他さまざまな名前がついて、いろんな歌や物語の題材となり、なかなか華やかです。




今回は「さちこ」というおそらく落ち着いた生き方の女性の、それでも赤く燃えるような雛罌粟に憧れる想いを、なんとか書こうとしてみました。少し強引ですがねw


なお、虞美人の逸話も哀しいですね。項羽と劉邦の楚漢戦争で、最初はたいへん大きな勢力を誇った項羽と、それに対して戦っては負けてばかりの劉邦。しかし、項羽は次第に人望を喪い、味方も敵に回していきます。「四面楚歌」も、自分のこもった砦の周囲に敵があふれていることを表す故事です。自分の故郷である「楚」の歌であふれていることから、自分の味方はもうどこにもいないことを悟った項羽は、愛妾の虞美人と別れの宴席を持ちます。








「黒髪・四季」は、日本の四季のうつろいを女性の黒髪の上で表現するという、日本の新古今の美意識につらなる表現ですw←どうみても、おおげさですがww





春の桜から初夏の風、梅雨の雨、夏の日差しと秋の月、紅葉に冬の雪といった、日本の四季を彩る風物を配してみました。かなり気に入っている作です。