〇実行行為
実行行為とは、犯罪結果発生の現実的危険性を有する行為をいう。
〇因果関係
因果関係の存否は、当該行為が内包する危険が結果として現実化したかという観点から決するものと解する。具体的には、①行為者の行為の危険性と、②介在事情の結果発生への寄与度を中心に諸事情を総合的に判断して決すべきである。
〇故意(38条1項本文)
故意とは、構成要件該当事実に対する認識・認容を意味する。
〇故意責任の本質
故意責任の本質は、行為者の反規範的人格態度に対する道義的非難である。
〇過失(「必要な注意を怠」った)
「必要な注意を怠」ったとは、過失を意味すると解する。そして、社会的に有用な行為ついての過失犯の成立を否定するべく、過失とは予見可能性および結果回避可能性を前提とした結果回避義務違反を意味し、構成要件該当性の問題であると捉えるべきである。
〇正当防衛(36条1項)
趣旨:同条は、緊急状況下で公的機関による法的保護が期待できないときに、侵害を排除するために私人による対抗行為を例外的に許容したものである。
①「不正の侵害」
②「急迫」(36条1項)とは法益の侵害が現に存在しているか、又は間近に押し迫っていることをいう。
③防衛の意思とは、急迫不正の侵害を認識しつつ、これを避けようとする単純な心理状態をいう。
④「やむを得ずにした行為」とは、反撃行為が侵害に対する防衛手段として必要かつ相当なものであることをいう
〇防衛行為の一体性
人間の行為は、客観面と主観面の統合体であるから、2つの行為が客観的に見ても主観的に見ても関連性が強い場合には、行為の一体性を肯定すべきである。具体的には、各行為が時間的場所的接着性を有することを前提として、侵害の継続性、防衛の意思等の事情を踏まえて行為の一個性を判断すべきである。
〇自救行為
まず、自救行為とは、正当防衛を認めるだけの侵害の急迫性は存在しないが、国家機関の救済を待っていては権利の回復が困難になる場合に、侵害者に対して自ら実力により救済を図る行為をいう。
そして、自救行為は明文にないものの、権利保護の必要性・緊急性が高度に認められる場合があることから、自力救済禁止の趣旨を没却しない限度でこれは許容されるべきである。
具体的には、①違法な侵害の存在、②自救行為の必要性、緊急性③自救行為の相当性、④自救の意思を考慮してその成立を判断すべきである。
〇原因において自由な行為
責任非難は違法な行為をする最終的意思決定、すなわち原因行為時の意思決定に向けられるため、実行行為たる結果行為がかかる意思決定の実現過程といえる場合には、同項は適用されないと解する。そして、①原因行為、結果行為、結果の間に因果関係があり、②原因行為から結果行為にかけて故意が連続していれば、かかる場合といえると解する。
〇実行の着手時期
「実行」の「着手」は、43条の文言上の制約から導かれる構成要件該当行為への密接性、及び未遂犯の実質的処罰根拠たる既遂結果発生の現実的危険性をもって判断すべきである。そして、かかる密接性、危険性の判断は、行為者の計画をも考慮に入れた上で、①第1行為が第2行為を確実かつ容易に行うために必要不可欠か否か、②両行為の時間的場所的接着性、③第1行為終了後障害となるような特段の事情の有無を考慮して決するべきである。
〇不能犯
不能犯が不処罰とされる根拠は、構成要件の実現に至る現実的危険性を欠いた点に求められる。そして構成要件は一般人への行為規範であるから、かかる危険性判断は一般人の認識を基準とすべきである。また、妥当な帰責範囲を画するため、行為者が特に認識していた事情も加味する必要がある。そこで、行為当時、一般人が認識し得た事情及び行為者が特に認識していた事情を基準として、現実的危険性の有無を判断する。
〇中止犯(43条但書)
①「自己の意思により」
中止犯の法的根拠は、責任減少と政策的理由にある。そうだとすれば、自己の自由な意思によって中止したといえるなら、責任の減少は認められ、褒賞も与えるべきである。そこで、「自己の意思」による中止があったといえるためには、(犯行継続の難易、行為者の計画、犯意の強弱、中止行為の態様等の諸事情を総合的に考慮して、)やろうと思えばできたがあえてやらなかったと評価できることが必要であると解する。
②「中止した」
「中止した」といえるためには、結果発生を防止するために必要かつ十分な行為が必要であるというべきである。そして、中止行為は国民からの非難を弱め、褒賞を与えるに値するものである必要があるから、それが真摯な努力である必要があると解する。
③因果関係の要否
さらに、中止行為と結果の不発生との間に因果関係が必要か問題となるも、上記中止犯の根拠からすれば、真摯な中止行為を行えば責任は減少するから、因果関係は不要と解すべきである。
〇間接正犯
正犯とは自らの意思で犯罪を実現し、第一次的な責任を負う者であるから、直接手を下さなくても被利用者を通して因果経過を支配し、自己の犯罪を実現した者もまた正犯となり得る。
したがって、利用者に①正犯意思があり、②被利用者に対して行為支配性を有していれば、間接正犯として処罰することが出来ると解する。
〇共犯の処罰根拠
・共犯の処罰根拠は、正犯を通じて間接的に法益侵害の結果(又はその危険)を発生させる点に求められる。そうすると、正犯と共犯の処罰根拠は基本的には同一である。
・共犯の根拠は、自己の行為が結果に対して因果性を与えた点にある。
〇共犯の因果性(幇助の因果性)
共犯の処罰根拠は共犯者を通じて、間接的に法益侵害の結果又はその危険を発生させる点に求められる。そうだとすれば、何らかの形で、幇助行為と結果との因果性が要求されると解する。
具体的には、幇助行為が正犯行為を物理的又は心理的に促進し、あるいは容易にすることで足りると解する。
〇承継的共同正犯
共犯の処罰根拠は、自己の行為が何らかの形で結果に対して因果性を与えた点に求められる。そうだとすれば、既に発生してしまった結果に対して、因果性を遡り、処罰を肯定することはできない。
もっとも、後行者が先行者の行為を自己の犯罪遂行の手段として積極的に利用した範囲においては、その限度で共同意思の下、自己の犯罪の手段として行っているものと認められ、結果惹起に対する因果性を肯定できるから、共同正犯関係が成立する。
〇共犯からの離脱
共犯の処罰根拠は、自己の行為が結果に対して因果性を与えた点に求められる。そうだとすれば、後の結果と自己の行為との物理的・心理的因果性が断ち切られたと評価できれば共犯関係の解消が認められると解する。
〇共謀の射程
共犯の処罰根拠は、自己の行為が結果に対して何らかの因果性を与えた点に求められる。そうだとすれば、当初の共謀の因果性が結果に及んでいないと認められる場合には、共同正犯の成立を否定すべきである。
その判断は、当初の共謀と実行行為の内容の共通性、当初の共謀による行為と過剰結果を惹起した行為との関連性、犯意の単一性・継続性、動機・目的の異同という事情から総合的に行う。
〇共謀共同正犯
共同正犯の処罰根拠は、正犯性を有する者が、法益侵害に対する直接的な因果性を与えた点に求められる。そして、実行行為を行わずとも、法益侵害に対してかかる因果性を与えることはでき得る。そうだとすれば、①共謀、②共謀に基づく実行行為、③正犯意思が認められる場合には、「共同して犯罪を実行した者」として罪責を負わすことはできると解する。
〇共犯と身分
65条1項の「身分によって構成すべき犯罪」、同2項の「身分によって特に刑の軽重があるとき」という文言から、1項は真正身分犯、2項は不真正身分犯に関する規定であるというべきである。
そして、非身分者も身分者を通じて、真正身分犯の法益侵害をすることは可能であるから、65条1項の「共犯」には、共同正犯を含む。
〇「幇助」(62条1項)
「幇助」とは、正犯に援助を与えることにより、その構成要件該当行為を物理的・心理的に促進することをいう。