大門屋はすっぽんぽんで空を飛ぶ~だけど高所恐怖症…(-_-;)~-DSC_0293.JPG

サンゲンヂャヤ…

このエリアの呼び名らしい

アイツを追いかけてこのエリアに入り込んでからこの五本の指を折って数えること一往復と三本になる

やって来て驚いたのはアイツの他にもワケアリな連中がそこいら中に隠れてやがるということだ

つまりはこのエリアに網を張っていればしばらくは食い扶持に困らない、この辺境の地までやって来てとんだ貧乏クジを引いたかと思ったがようやく俺にもツキが回ってきたらしい…

しかし、アイツはどこに隠れているのやら、

わずかな気配を辿って狭い路地裏を歩き回ったが古びた映画館のあたりでその気配は途絶えた

ここはまるで時間が止まっているかのように四十年ほど前に初めてこの異国を訪れた時の風景とよく似ている

どこの世界も建物が新しくなるたびにつまらなくなってゆく…

つまらなくなるたびにアイツのような輩が増えて俺の仕事が増えるのだから嘆いていいのか喜んでいいのか分からない

冴えない中年の肉体がニコチンを欲しがる、

全くなんでこんな冴えない体を選んでしまったのやら…

ハイハイ、わかりました

タバコ屋に足を向けたその時、背中に異物を突きつけられた

「ちょっと付き合ってくんない?」

若い女の子の声だ

背中をチクチクとつついているのは彼女の爪なのだろう、この尖った感じだとド派手なネイルに違いない

「アイツの知り合いかな?」

「付き合ってくれたら教えてあげてもいいよ」

彼女は笑った

仕方ないので彼女に背中をチクチク押されながら人気の無い路地裏のさらに奥へと入った

「こっち向いていいよ」

振り返った顔を見るなりこの中年男のドーパミンがいきなり大量に分泌され顔のあたりが火照りはじめた

シャム猫のような顔をした女の子…これがこの中年のストライクゾーンというワケか

「なに赤くなってんのさ!」

「この体の正直な反応らしい…それより付き合ってやったんだ、アイツのことを教えてくれないか…」

その瞬間、五本の金と銀の閃光が顔面に向けて放たれた

あわててスエーバックしたがかわしきれず頬に三本の筋が入り血が吹き出した

閃光の正体は金と銀の彩飾を施された彼女のネイル…

「悪く思わないでね、これがアタシの仕事なもんで♪」

シャム猫の笑いと同時にネイルがみるみる伸びてゆく

「どこにいるの!?」

シャム猫の叫びとともに伸びて五本のジャックナイフに変わったネイルが袈裟懸けに中年の胸を裂いた

動きが鈍いんだよこの体はよう!

「こんなデブなオッサンなんかに隠れてないで出てきなさいよ!」

左右のネイルの連撃、こいつはまるで薩摩示現流だ

もう、オッサン血だらけだし殺すワケにもいかねえよな…

仕方なく左腕の袖をまくる

露になるのは犬…いや、ケルベロスのタトゥー

これが本当の俺だ

「そこにいたのか!」

シャム猫の爪が左腕の俺めがけて降り下ろされる

「ばーか♪」

オッサンの左腕からリアル3Dで飛び出した俺はシャム猫のネイルめがけて焔を吹いた

両手十本の爪が青い炎で焼かれてゆく

このネイルがシャム猫の本体…俺がこのオッサンの左腕にくっついているのと同様、この世界とは別のところからやって来た連中のひとりだ

俺はこんな奴等を狩るのを商売にしている犬野郎というわけだ

俺はタトゥーに戻り血だらけのオッサンの体を引きずって路地裏をとっとと逃げた

ネイルの焼けたシャム猫はいづれ正気を取り戻すだろう

タバコが吸わせろ…

それが血だらけのオッサンのセリフか?

俺が体を借りるこのオッサン

ダイモンヤケンサク

どうしょうもないオッサンなんだよな…

それはそうとアイツを狙ってやって来た俺だったが、これでめでたく俺もアイツに命を狙われる身になったワケだ

これで五分五分…とことんやらしてもらいますよ

黄昏が妙にキレイに見える

そんなサンゲンヂャヤには申し訳ないがこれが俺の仕事だ