誰でも自分の欠点は認めたがらないものだ。
アゲ尾の嫁だって
「私はそんなにとんちんかんじゃない」と言って譲らないし、
たとえば頑固な人は、自分が頑固であることを認めないものである。

「チョウシ屋」は東銀座駅A7出口を出てすぐなのだが、
チョウシ屋に行ったその日は、
午前中に銀座駅界隈で打ち合わせがあったため、
少し歩かなくてはいけなかった。

アゲ尾は自他ともに認める方向音痴だ。
かなり前から薄々気が付いてはいたが、
数年前にようやく自分でも方向音痴であることを認めた。
初めて行く場所では、まず間違いなく迷う。
迷ったら一度もとの場所まで引き返せばいいという人がいる。
だが、方向音痴は引き返す道にまた迷うのだ。
一度迷っってしまうとなかなか抜け出せず、
引き返そうにも元来た道もわからない。
挙句、どこに行きたかったのかすら思い出せなくなるのである。
「どこでもドアさえあれば…」と何度唇をかんだことか。
この気持ちは方向音痴の人でなければわからないだろう。

そんなアゲ尾をバカにし続ける友人がいる。
通称“かんちゃん”。
かんちゃんは、めっぽう方角に強く、
初めて訪れる場所でも、まず迷うことがないという。
適当に歩いていても目的地に着くらしい。
アゲ尾からすると、それはもう神だ。

チョウシ屋に行った日は、
そんなかんちゃんと一緒だったため、
アゲ尾は心強かった。
目的地を記した地図を見せると
「あ~、ここね」と、しっかりとした一歩を踏み出した。
さすが神。

そして歩くこと10分。
「このあたりだと思うけど」とつぶやいて、もう一度地図を見せろと言う。
素直に見せると、「あ~、わかった」とひとり納得し、右に曲がる。

それから、もう10分。
「かんちゃん、オイラは腹が減ったぞ」と言うと、
もうちょっとだと答える。
う~ん、でも地図を見る限りでは銀座から10分ほどで到着するはず。
なんだか雲行きがあやしい。
もう20分も歩いているのだ。
まさかとは思ったが、そのときはまだかんちゃんを信じていた。

それから、さらに10分。
ふとビルの住所表示板に目をやると、そこは築地だった。
銀座から目的の東銀座を素通りし、たどり着いたのは築地。

かんちゃん、神陥落の日である。
言い逃れはできない。認めるしかないはずだ。

結局、さらに10分歩いて東銀座まで引き返し、
なんとかチョウシ屋に到着することができた。

昭和2年創業のチョウシ屋は、持ち帰りコロッケ店の元祖と言われている。
店構えも味も「昔ながら」という表現がぴったりの店。

$大門アゲ尾の毎日がフライデー!-チョウシ屋・外観

パンは、コッペパンか食パンのどちらかを選べる。
アゲ尾もかんちゃんも食パンにした。
食パン2枚にコロッケを挟み、2つに切って紙に包んでくれる。
なんとも普通だが、その普通がなんかいい。

$大門アゲ尾の毎日がフライデー!-チョウシ屋・コロッケパン

会計になって、突然、かんちゃんが「あっ!」と声を漏らした。
「金がない…」

かんちゃんが地に落ちた日であった。

それではまた来週。See you アゲイン!





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