こんにちは、ちびまるです。本日も「星空」の続きです。
ではでは本編へどうぞ
“あの家主はだめだ~。”
それもそのはず、このアパートの家主はとても厳格で
入居者を選ぶのです。
こんな師走の忙しい年の暮れに、ただでさえ
ややこし訳あり者を入居させるわけがありません。
とその時、熱いお茶を全部飲みほした二人の子供が
うっすらですが私に微笑んだように見えました。
“・・・・。やってみるか!”
半分“駄目もと”と言う気持ちと、
“何とかしなきゃ”という気持ちが交差します。
そうと決まったら、モタモタしてられません。
時間がないんです。
すぐさま、家主に電話をしました。
「もしもし、社長さんはいらっしゃいますか?」
「社長は今留守です。30分程で戻りますが」
事務の仕事をしている社長の奥さんが、
電話で対応してくれました。
「今からそちらに行きたいんです。できれば社長さん
にそう伝えていただけますか?」
そう言って私は車の鍵を持って出る用意をしました。
そう、こうなったら直談判です。
この方法しかありません。
あせります。
時間がありません。
だんだん口調が早くなっていくのがわかります。
「それじゃお客さん、とりあえず申込書を書いて下さい。
今からこれを家主に持っていきます。
その間に他の営業マンに物件を案内させます。
その後は、ここで待って居て下さい。」
母親は言われたとおり用紙に書き込んでいました。
他の営業マンたちもあきれた様子から、だんだんと
“がんばれよ!“と言っている様に思えました。
家主の会社まで車で10分ほど。
いつもの事務員さんに挨拶をして中で待ちました。
事務員さんがお茶を持ってきてくれて、
私の握りしめた申込み用紙をチラッと見ました。
おそらく察しがついたのでしょう。
「お仕事、大変ですね。」
ひとこと声をかけ、お茶を差し出してくれました。
しばらくすると、家主さんが帰ってきました。
「社長さん!お忙しい中申し訳ありません。」
「ああ。○○君とこは今日までじゃないんか?
うちは今日までや。
やっと挨拶回りが終わったとこや。ハハッ!」
「今年もいろいろお世話になりました。
来年も宜しくお願いします。」
「こちらこそ」
いつになく上機嫌です。
「ところで、実は☆☆荘(アパート)の件なんですが」
「・・・・」
「今日、子供二人の親子連れが着まして・・・。
今日入居したいんです。」
社長の顔つきが変わりました。
「今日!? アホなこと言わんといて!
そんなややこしい話! ダメや!あかんっ!」
思ったとおりの返答です。
「いや、そこをなんとかお願いしたいんです!」
「アカンもんはアカンのや!」
「お願いします!社長!お願いします!」
「だいたい、いくらで入りたいって言ってるんや!?」
「実はこの条件で・・・。」
「やっぱりそうや!
無茶なうえに家賃も無茶なこといいよる!」
無理なお願いをして なお家賃交渉をする。
当然の返事です。
「ワシは金のことはどうでもいいんやで!
だいたい保証人はどうすんねん!?」
「もちろん、この申込みに書いてある保証人です。」
「そんなのわかってる。本人はアパートに居るけど、
保証人はどこにおるんかわからへんやろ!
印鑑証明やら実印やらどうすんや!?」
「来年早々に私が持ってきます」
「そうじゃなくって、来年早々までの間だれが責任を
もって保証するのか!?と聞いてるんや!」
「・・・・。」
「君が全部責任を負うのか!?」
「・・・・。」
言葉がでません。この状況下で責任という言葉には
我々は非常に弱いのです。賃貸物件の管理を
しているといろんな形での“最悪の結末”を経験する
ことが何度かあります。一度でもそのようなことを
経験した業者や家主は、どうしても悪いほうに考えて
しまいます。家主の言うことは、正論なのです。
決して間違ってはいません。
ただ、私としては自分の無力さを嘆くばかりです。
「わかりました。忙しいのにすいませんでした。」
と私は丁寧にお辞儀をして出て行きました。
ようこそ ホームメイトFC難波西店へ
【本編はすべてフィクションであり、登場する人物もすべて架空のものです】