こんにちは、ちびまるです。
今日は私たちが実際体験したことに基づいたお話を
ひとつ書かせて頂きます。
不動産という生活にかなり密着したモノを扱うお仕事ならではの体験
なのですが、あくまでもフィクションとして読んで頂ければと思います。
ではでは本編へ
不動産の仕事で関わるお客様はまさに千差万別。
いろんな方が来られます。
賃貸仲介を取り扱う当店のようなお店はなおさらです。
期待と希望に満ちあふれた方やそうでない方。
金持ちで家賃にいとめを付けない方やそうでない方。
因果なもので、多様にお客様と接しているうちに
どういう状況かすぐにわかるようになってきます。
一種の職業病ですね。
この仕事は、そのお客様次第で仕事内容が大きく左右されます。
年末も押迫る張詰めた空気を感じる夕暮れ時に
なると毎年この出来事を思い出します。
今年も終わろうとする仕事納めの日のことです。
店内では何処に飲みに行くかと盛上がっていて
今日はそろそろ店を閉めるかなと思った矢先。
「あの~。まだ やってますか?」
と女性の弱々しい声が聞こえました。
仕事の終わりかけに、不意に仕事が舞い込んでくる
何とも辛いものがあります。
それが今年も終わろうとする仕事納めの日の
終業時間まぎわだとなおさらす。
「あ~~・・・。」
と正直一瞬ためらいましたが、
「どうぞ。」
と言ってしまいました。
後ろから、“なんで断らないんだ”って社員の声に
ならない声が聞こえてきそうで振り返れませんでした。
つい入れてしまったのも、その女性の後ろに小学生
くらいの女の子と、3歳くらいの男の子を見てしまったからです。
男の子はブルーのジャンバーに顔が半分以上隠れる
くらいマフラーをグルグルに巻いていました。
大きな鞄も持った母親のコートのすそを引っ張る手が
何とも冷たそうで、
ガンガンに暖房の効いたお店と対照的に、
外は風が見えるくらい寒そうです。
私にも、このくらいの幼い男の子がいます。
一瞬自分の子供の姿が頭に過ぎりました。
「あの~、部屋を探してるんですが・・・」
「どうぞ。どうぞお入りください。」
と言ってもなかなかスグに入ってきません。
「どうぞ こちらにお掛け下さい」
とテーブルに招いても座ろうとしませんでした。
おそらく何軒もの他の不動産屋さんに行って
追い返されたのでしょう。
少し戸惑った顔をして子供を中に入れました。
その子供ふたりも何だか落ち着かない様子です。
私の顔をにらめつける様にこちらを見ていました。
3人分のイスをひとつのテーブルに用意してようやく
席に着きました。
「部屋を探してるんです。」
「わかりました。」
「どのようなタイプの物件を探されてるんですか?」
「この子たち3人で住むんです。
小さな子供がダメでなければ何でも・・・」
「大丈夫ですよ。」
「・・・・」
「ところで、入居される予定はいつですか?」
「・・・・。今日すぐ入れるところを・・・」
「今日ですか~!!??」
やはりそうです。いやな予感が的中しました。
大きなカバンがそう訴えていたのです。
「・・・・」
母親も予想通りといった顔をしました。
きっとうちに来る前に何軒か行った不動産屋でも、
こんな風に言われたんでしょう。
“まいった!これは まいった!”
心の中でつぶやきました。
ようこそ ホームメイトFC難波西店へ
【本編はすべてフィクションであり、登場する人物もすべて架空のものです】