古いドラムマガジンはだいたい処分するんですが、この号だけは捨てられません。




30数年前のこと。


ドラムを叩ける同級生に誘われて、楽器屋奥の練習スタジオへ。

彼の練習を見学してたら自分にも出来そうな気がして、やってみるとすぐにエイトビートの真似事が出来てしまう。

そんなことで「もしかして天性の素質があるかも!?」と勘違いをしたまま、気付けば30数年もドラムを続けてます。


少し叩けるようになって調子に乗ってた頃、楽器屋で流れていたこのビデオを見て呆然。


手数王。

この方のドラムをレベル10,000とすると、

自分はまだレベル1ですら無い事実に打ちのめされました。


教則本「手数大百科事典」


手数王シリーズのビデオや教則本を買って練習に励んだけど、30年経ってもこのレベルに到達するのは不可能。こんなの出来るようならプロになってます(笑)

世界を見てもこのレベルは一握りじゃないかなぁ。

 

フットワークも凄くて、このビデオの副題は「足数王」


そしてお笑いのセンスもなかなかで、

「口数王」とも言われてました。

結構コテコテの芸風でしたが、変に格好つけたドラマーよりも大好きでした。



2016年の動画ですが、これも驚いた。


楽譜渡されて、ざっと見て、セットに座って、本当の初見でこの演奏。

もはや神。



2015年のこと。
鳥取のライブハウスに神が降臨。


ライブ終了後、20年前に買った教則本にサインをもらいました。
ハイハットの音色が柔らかくてキレイだったとお伝えしたら嬉しそうに笑われて、気さくにいろいろと話してくれました。

そして6年後。

30年ずっと追いかけてきた菅沼孝三氏ですが、病に冒され2021年11月に旅立たれてしまいました。

享年62才。

あまりにも早すぎる。何を言えばいいのか、この感情を言葉では表せません。



そして先日。

一周忌が過ぎた頃、手元に最後のソロアルバムが届きました。

タイトルは「THE KING OF MANY STROKES」


癌に冒され、余命宣告されてからもずっとドラムと向き合っておられました。

最後の録音を終えて、作品を完成させてから旅立たれたそうです。


ドラムに人生を捧げられ、後進の指導にも積極的で、手数王のDNAを受け継ぐスーパードラマーを多数輩出。

川口千里さん、平陸さん、板東慧さん、そして娘のSATOKOさん。

世代が代わっても、きっと手数王のスピリットは受け継がれていくと信じています。


僕が今もドラムを続けているのも、それによっていろんな人と出会えたのも、全て菅沼孝三氏のおかげ。本当に感謝しかありません。


僕にとって世界一のドラマーは、これからもずっと手数王です。