「ほかならぬ人へ」白石一文さん。

図書館で借りた本。

これが、直木賞受賞作らしいけど、

読むのはこれが初めて。


私の感覚として、

本には、2通りあって、

ただ、お話しとして読むもの。

とても面白く感動もし涙して読むけど、

あくまでもそれはお話し。

舞台の上の、ブラウン管の向こうのお話し。

吉田修一さんや藤原伊織さんの本はそうかな?

そして、なんだか自分のことのような、

読んでいると入り込んでしまって、

途中で本を置けなくなるような感じの本も

あります。

どちらが良いという訳ではないけど、

この「ほかならぬ人へ」は、

後者の本で、すっかり入り込んでしまいました。


主人公は、名門の一家の三男。

豊かに何不自由なく育ちながら、

父親や兄達に比べ、自分の不甲斐なさに、

劣等感と悔しさ、無念さばかりを募らせて

大学卒業までを過ごす。

一家では、初めて、

普通の会社の普通のサラリーマンになった主人公は、家を出て、

親たちの反対を押し切り、

キャバクラで働いていた女性と結婚する。

そしてやはり結婚生活はうまくいかなくなる。


この本は、たぶん題名のとおり、

男女間の恋愛、結婚がテーマで

そのかけがえのない、ほかならぬ、その人を、 

どう見つけるか?ということを書いているのだ

ろうけど、私は、恋愛や結婚というより、

主人公の女性上司の東海の、人柄、生き方、

語る言葉に、とても惹かれました。

主人公が、離婚届けの用紙を突きつけられ

落ち込んでいる時の

「生きてたらいろいろあるよ。でもね、何年か経ったらどんなことでも大したことじゃなかったって

分かるから。人間はそうやって、毎回自分に裏切られながら生きていくしかないんだよ」

という言葉。

本当にそう!と深く納得したり、

また、その東海さん自身が、

癌になり、離婚し、心も身体もボロボロで、

仕事も手につかなくなった時、

「ブサイクでバツイチで、おまけに癌で、これで

仕事まで失くしたらお前は終わりやぞ」

と励ましてくれたという上司の言葉。

東海さんも、命の恩人と言っているけど、

これほどの強い温かい励ましの言葉ってないな!

と感動して、

そんな人がいて、東海さん良かった!と

思ったり。

もしかすると、この主人公の女性上司、東海さんに

感情移入してしまったのかもしれません💦


テーマである、「ほかならぬ人」に関しては、

私としては、最初からそんな人はいない、と

思っています。

仲の良いご夫婦というのは、たぶん、どちらもが、

とても賢明で、思いやりがあり、優しい人なのだろうと思います。

もともとの、ベストの人というのではなく、

ふたりのその人柄、努力で、ベストの相手に

なった、ということではないかと思うのです。


やはり白石さんの本なので、食べ物の話し、

お酒の話しは、とてもリアルで、

美味しそうでした。


わたしは、今日、今年初めて、

冷麺を作って食べました❣️