なんだか圧倒されました。
上巻を読んだ後、1日おいて、
今日、下巻をいっきに読みました。
文章が、語り口の講談のようなので、
ずっと舞台を観ている気分でした。
歌舞伎は、もうずっと前に、
勘三郎さんの平成中村座を一度観たことが
あるきり。
それは素晴らしくて、大感動!でしたが、
やはりなかなか敷居が高くて
その一度きりになっています。
この本を読んでから、観たらよかったな、
そうしたら、もっと深く観られたのに、と。
極道の子供に生まれながら、
思わぬ運命で、歌舞伎の世界に15歳で入り、
どんな厳しい稽古も
「つらいと思うたことない」
という喜久雄は、
もうただ芝居だけに生きていく、
その歌舞伎だけにかけた人生の物語。
天性の役者の才能を持っていて、
ひたすら技を磨き、その道を進もうとするのに、
スキャンダルや、裏切りや、妬みや、と
いろんなことに足を取られながらも、
それでも頂点に登りつめていく。
物語は、あまりにもリアルに書かれているので、
まるで、現実にあった歌舞伎の世界のことの
ようで、
喜久雄も、モデルは誰なんだろう?と、
歌舞伎界のいろんな人を思い浮かべてみたり、
その舞台も、演目ごとに解説があり、
背景、照明、匂い、観客の熱気など、
描写が細かく、目の前で観ているようで😊
やっぱりもう一度歌舞伎観たいな、と。
吉田修一さんを、「怒り」で初めて
認識し、その流れで「悪人」
そしてこの「国宝」と読んできているのに、
全く、作者が誰、ということを意識もせず、
物語に入り込みました。
独特の文章と、歌舞伎という特殊な世界の
お話しで、独特な一冊。
吉田修一さんの、スケールの大きさを感じます。