日本 : 専門家が計算するあいだ、住民は被害を被る。
http://www.criirad.org/actualites/dossier2011/japon_bis/en_japonais/jap_classement_ines.pdf
http://www.criirad.org/actualites/dossier2011/japon_bis/en_japonais/japonais.html
大気に放出された放射性物質の量にもとづき、日本の原子力安全・保安院は福島第一原発に起きた事故が国際原子力事象評価尺度(INES)のレベル7に認定されるべきだと発表した。
現在までにこの最高レベルに達したのは、チェルノブイリ原発事故のみである。
原子力安全・保安院(NISA)は、このレベル評価は試算にもとづく暫定的なものであり、放出放射性物質の量はチェルノブイリ事故の7~12%にしかあたらないと表明している。
福島第一原発から放出された放射性物質の量が、ウクライナの原発事故より少ないにせよ匹敵するにせよ、それらは何百万人もの人々に対する憂慮すべき汚染を引き起こした。放出量の計算はもっとずっと前にされていて然るべきであり、その計算を住民の防護に役立たせるべきであった。
2011 年3月11日以来、福島第一原発で起きた一連の事故は、国際原子力事象評価尺度(INES)のレベル5からレベル7に引き上げられた。原子力安全・保安院(NISA)と原子力安全委員会(NSC)が行った大気中へ放出された放射能物質の推算量に基づく引き上げである。計算に使われた仮定は伝えられていない3。
よりどころにされた基準はINESのマニュアル(2008 年度):大気中への放射性物質の重大な放出、つまりヨウソ131 等価で50 000 テラベクレル(5.1016 Bq)以上(マニュアルの17 ページ参照)。選択された放射性核種の活動の加重計算システムは、ヨウソ131 を基準になされる。セシウム137については、かけ算の係数は40 に定められている(マニュアルの16 ページ参照)。
原子力安全・保安院の推算は福島第一原発について、レベル7 に移行する量の7 倍、原子力安全委員会の推算(同じく試算に基づく)では13 倍の量に達する(次ページの図表参考)。
これは現在までの放出量である。今後の変遷について予断を下すものではない。また、この推算は大気中への放射性物質の放出のみに関するものである。太平洋への放出(大量だが資料なし)については考慮されていない。
3 月12 日に日本の当局はまず、1 号機の原子炉に起きた事故をレベル4 に評価した(「放射性物質の放出は少量であり、おそらくその地域の食物の監視以外の防護対策の施行を必要としない」
1 « The Rating of the International Nuclear and radiological Event Scale (INES) on the events in Fukushima Dai-ichi Nuclear Power
Station (NPS), Tokyo Electric Power Co. Inc., caused by the Tohoku District - off the Pacific Ocean Earthquake is temporarily assessed
as level 7, considering information obtained after March 18th. » NISA news release, April 12, 2011.
2 今から約5 年前、1986 年4 月26 日のチェルノブイリ原発第4 号原子炉の爆発。
3 この声明が発表された4 月12 日18 時現在では伝達されていない。原子力安全・保安院は、この推算はと
りわけ、日本原子力基盤機構(JNES)による原子炉の状態の分析結果を使った試算だと述べている
)ことを思い起こすのは有用である。このレベルは3 月12 日から18 日まで保たれたが、その期間に強度の放射性物質の放出が起きたのである(ベント、爆発、火災……)。
3 月18 日、原子炉1 号機、2 号機、3 号機に起きた事故はそれぞれINES 尺度のレベル5 になった4:「広範囲に影響を及ぼす事故」だが、レベル6 の「大量の放出」、レベル7 の「重大な放出」に比べて「放射性物質の限られた放出」の段階である。住民と環境については、レベル5 は5.1014 ベクレルから5. 1015 ベクレル(レベル6の最大限)の放出にあたる。
原子力発電所のそれぞれの原子炉について個別にレベルをつけることによって、レベルを当然ながら最小限にとどめることができる。住民にとっては当然、すべての放射性物質の放出は混ぜ合わさり、累積される。
(中略)
CRIIRAD にとっては、このレベル引き上げは遅すぎる。
仮説と推算は、住民を守るために役立てられるべきであった。
レベルの評価は、主に4 週間前に起きた放射能物質の放出にもとづいてなされているのだ! それに、レベル評価が問題なのではない! 根本的な問題は、福島第一原発による放出をチェルノブイリの放出と比べることではない。そんなことは、専門家が時間をかけて明確にすればよい。
緊急にやるべきことは、危険のレベルを推定し、それにみあった防護措置をとること。それはまさに、4~5 週間前に緊急になされるべきことだったのだ!住民が受けるかもしれない放射能物質の線量を前もって予測するべきだったのであり、そうした場合においてできるかぎり、最も被害を受ける地区の住民の被曝と汚染を制限するために、防護措置を決定するべきだったのである。
住民は、異なる複数の被曝のかたちにさらされることを忘れてはならない。
1)大気中にある粒子の放射線、さらに地上と物体の表面の放射性堆積物による外部被曝。
2)放射性物質放出の最初から吸い込まれた放射性の気体や大気エアロゾル粒子による内部被曝
3)意図せずに摂取した放射性粒子と、汚染された食物を食べたことによる内部被曝。
これらすべてが加算されて蓄積される線量は、非常に心配な結果を導き、それは当局が実施した避難、屋内退避、ヨウ素剤配布の30km 圏の外にまで起きている。
事実:
・屋内退避エリア(20-30km)内でもその外側でも、毎時数マイクロシーベルト/時(μSv/h)から数十マイクロシーベルト/時の線量が今でも頻繁に計測され、ときには100 マイクロシーベルト/時を越えることさえある。
・福島第一原発から230km 南の東京で3 月15 日の午前、突如として放射能が増加した(11 時にヨウ素粒子240 Bq/m3 ,気体のヨウ素の量はいまだわからず!)気象条件によって、幸いにして強度の汚染は3 時間しかつづかなかった。さらに数時間汚染がつづいたら、被曝弱者のグループにはヨウ素剤を飲ませるべきだったが、当局にそれを配布する時間はなかっただろう。
東京の汚染は比較的少なかったが、もっと北部に位置する町村の汚染は重大だったのである。
・葉野菜のヨウ素131 による汚染は数十万から数百万ベクレル/kg に達した:原発から45km 南にある人口345 000 人のいわき市で690 000 Bq/kg、北西40km にある人口7000 人の飯舘村では2 540 000 Bq/kg。
これほど汚染されたらもはや食物ではなく、核廃棄物である。幼少の子どもが2-3 グラム食べただけで、1 年間の最大許容量に達してしまう。
・これら最初の措置は3 月18 日にとられ(それ以前は何もない!)、公表は3 月22 日だった。この事実は、検査が実施される以前の住民の被曝について鋭く問いかけている。むろん、地震と津波後の厳しい状況を考慮しなければならない。
しかし、いくつもの原子炉が冷却されていない状態で、おそらくベントが大量の放射性物質を放出することを知りながら、数日間にわたって、最も被害を被る地帯である福島県に防護対策がなかったことをどう説明できるのか?
・また、事故状況で実施される制限(野菜の場合、ヨウ素131 について2 000 Bq/kg)より低い量の汚染食物の摂取に関連した問いかけがある。日本の当局による暫定規制は、ヨーロッパにおける量に比べて、全般的にいくらか防護性が高いが、それでもその制限値は高すぎる。
・汚染された地区の住民が吸い込み、呑みこむであろう放射性ヨウ素の量を考慮し、ヨウ素剤が汚染されるより前、そうでなければとにかくなるべく早く摂取されなければならないことを知りながら、原子力安全・保安院はなぜ、ヨウ素剤を摂取する命令を3 月21 日、つまり大量の放射性物質の放出が到達した数日後にしか出さなかったのか?
CRIIRAD は、福島第一原発から1 か月にわたって放出された放射能物質の影響を被っている地域の住民の被曝についての文書を制作している。その中には上記すべての要素が再びおりこまれ、展開されるだろう。
付属資料
1.CRIIRAD は3 月14 日の声明の中で、日本の当局がINES 尺度のレベル4 の評価をしたことを批判した。「CRIIRAD は福島第一原発で起きた重大な事故の過小評価と、金曜日以降に放出された放射能の量と大気の汚染レベルについての情報の決定的な欠如を告発する。それらのデータがないために、放射能の危険レベルについて語ることは不可能である。いずれにせよ、入手できた稀な数字からは、放出放射性物質が「あまり重大ではない」(INES 尺度のレベル4)とか「少ない」(日曜朝のコシュスコ=モリゼ環境大臣のテレビ発言)とは言えない。
2. INES 尺度:フランス語の総括的説明、マニュアル英語全文(2008年度版)