6月6日(日本時間)に太陽の手前を金星が横切る“世紀の天体ショー”の観測が、太陽系外の「第2の地球」の発見につながると期待されている。
欧州宇宙機関(ESA)が、地球上の望遠鏡と金星の軌道を周回する探査機「ビーナス・エクスプレス」で同時に金星の大気を観測。
その成果を、太陽系外の惑星にどのような大気があるかをより高精度で推定するのに役立てる計画だ。
「今回の『金星の太陽面通過』を、欧州の非常にユニークな場所とビーナス・エクスプレスの双方で観測でき、とてもエキサイティングな気分だよ」
ESAのビーナス・エクスプレス計画に参加する科学者ハカン・スベデム氏は、胸を踊らせている。
【地上データと比較】
ESAの発表によると、地上からの観測は北極圏にあるノルウェー領のスピッツベルゲン島で行う。
科学者チームが宇宙望遠鏡などを使い、真夜中の太陽の手前を横切る金星を観測しデータを収集。
地上観測に基づく金星の大気の状態の推定結果と、ビーナス・エクスプレスによる通過中の金星の大気の直接観測データを比較する。
地上からの推定結果と直接観測データの「答え合わせ」ができるため、推定の精度を確認し今後のさらなる精度アップにつなげることが可能となる。
太陽系外の第2の地球探しでは、太陽のような恒星の前を横切る惑星を天文台や宇宙望遠鏡で見つけ、大気の有無や組成を推定する方法が有力。
探査機による直接観測は不可能なため、地上からの観測に基づく推定の精度アップがカギとなる。
「太陽系外の惑星を探す計画に役立つ」と、スベデム氏の期待は大きい。
【日本全域で】
日本の国立天文台によると、金星の太陽面通過は、国内では6日午前7時10分ごろから午後1時47分ごろまで6時間半余り続き、日本全域で観測できる。
日本などのアジア東部のほか、太平洋西部、オーストラリア東部、北極圏でも最初から最後まで見られる。
前回は2004年6月8日に観測されたが、次回は105年後の2117年12月11日のため、多くの人にとってラストチャンスとなる。
金星のシルエットが太陽の縁と接触する直前に水滴のようにくっついて見える「ブラックドロップ(液滴現象)」が観測できる可能性もあるという。
国立天文台では、5月21日の「金環日食」と同様に日食グラスで観察し、肉眼で見たり、望遠鏡やサングラスなどでの観察は最悪の場合失明にもつながるため絶対しないよう呼びかけている。
金星の太陽面通過は、金環日食に比べれば派手さはないものの、人類の夢をかなえる大きな可能性を秘めている。