
まず、タイトルのユニークさに目を見張る。老いを素直に受け入れることにより、さまざまな工夫も生まれる。ちょっと思い出せない「あの人の名は」と飾らない心情からとなる。
著者は、血液学が専門で、新潟大学の第一内科から大学病院の輸血部部長、三条済生会病院長の要職を歴任された。退任後は非常勤医師として福祉施設にも出向く。
福祉施設で口数の少ない高齢者に的確な質問と行動観察で現状を把握される。デリケートな感性で
問題点を捉える特性は医師として最も適任である。
本書は折にふれ「県医師会報」市医師会報」、「第一内科同窓会誌」、「学士会会報」などに寄稿した
エッセイを一本にまとめたものである。
郷土の大政治家の田中角栄を未完の勝者として振り返る。かと思うと、落雷により自宅の無線LAN
のルーターが故障しテレビの映像が送れなくなった時は2カ月間の試行錯誤の末、自力で復活させた
という凄腕でもある。
日常生活で目にする季節の移ろいや動植物にも愛情を注ぎ、メジロの巣づくりにも感動する。
加齢に伴う視力や聴力の低下を補う対策にも工夫を凝らす。
前著『風邪は腕から』で「Successful Aging・きれいに歳をかさねる」を提唱され、自ら実践されている。どうすれば自分らしく老後を快適に過ごせるか、具体例を上げた実践編でもある。
エアコンなどの冷え対策、温度設定とどのような下着が相応しいのかも試してみる。
恩師の柴田 昭先生の米寿の祝い。人の健康管理にも気を配る。また、ご同僚の金子兼三氏の
活躍ぶりを回想される。
また本は、開くと閉じようとする力が働き、開いた状態を保つことが難しい。これが案外ストレスになることを知る著者は、開きに特化した製本方式を採用した。
臨床家の真骨頂として風邪薬の創意と工夫で副作用を減らし症状を和らげる風邪薬G4は出色で
ある。
「あとがき」に高齢になって初めて体験することが多いことに気づいた、とあるように著者自身の
体験を通して高齢者に優しく語りかける、さわやかな癒しのエッセイ集となる。
ISBN978-4-905400-24-0 C0095 Y910E
▮A5判 108頁 定価(本体価格1,000円税込)