戦前1925年に制定された「治安維持法」という法律は国体や私有財産制を守るため、それを否定する思想や運動を厳しく取り締まることが目的であった。この法律で犠牲になった人は余りに多く天下の悪法であった。小熊金之助という画家を志していた人のことを調べると、治安維持法で検挙、留置、拷問という事実に行き当たった。社会の矛盾に目覚め正義感に燃え、解放運動に身を投じた人たちのことを埋もれさせるべきではない、理不尽な目にあった人たちを風化させてはならないと考え、月2回発行の機関誌に12年間連載をしたものを纏めたのが本書である。
プロレタリア詩人の長沢佑(1910-1933)もそういう活動家の1人であった。「貧農のうたえる詩」がある。特高警察に検挙されて拷問を受け、瀕死のところを当時の医学生が交代で看病したが結核に冒され23歳の若さで亡くなった。
著者は中学2年生で第2次世界大戦の終戦を迎えた。それまで「本土決戦」「一億玉砕」を強いられて来たのが、いきなり無条件降伏という衝撃を受けた。その一方で戦争に反対してきた人たちが刑務所から出獄し尊敬の念を覚えたという。著者ならではの真面目な筆運びに共感せずにいられない。
北の星座 小熊金之助と時代に抗した人々 佐藤良夫著
B 5判 390頁 2段組 電子書籍


