12月9日のEU首脳会議では、財政規律強化と救済基金拡充について一応の合意が打ち出された。しかし、具体策や短期的に市場を沈静化させる手段の欠如が批判され、欧米株式市場はその翌日には下落に転じた。ユーロの安定はまだ遥か先の話のようである。そもそもユーロ圏の問題は根が深い。まず、通貨統合の発足前後から10年以上に亘って大規模な「南欧国債バブル」が醸成された。即ち、南欧の国債の利回りは、財政力が最も高いドイツ国債とほぼ同じ水準まで低下したのだが、これは後知恵で考えれば一種のバブルとしか言い様がなかった。統合が行われたのは通貨だけだったのにも拘らず、財政統合が行われたのと同然の水準まで南欧の国債が買い進まれ、同地域の金利が大幅に低下した結果、様々な歪みが発生したのである。
まず、アイルランドやスペインでは住宅や不動産の価格上昇と共に大規模な信用バブルが発生し、過剰な設備投資や過剰な消費が行われた。このバブルがリーマンショックによって崩壊すると、民間部門のバランスシートが大幅に毀損し、その救済を進めるにつれて政府のバランスシートが悪化していった。一方、ギリシャやポルトガル、イタリアでは、国債バブルによって資本コストが低下したため、放漫財政の継続が可能となった。財政健全化や構造改革が先送りされ、公務員の賃金引上げに象徴されるように歳出が大幅に拡大した。好況期には税収も拡大していたため問題が目立たなかったが、やはりリーマンショックによって不況に陥ると、政府部門のバランスシートが大きく毀損していることが明るみになったのである。
南欧の国債価格は今や暴落し、南欧の国債は金融機関にとって不良債権と化した。本来は安全だったはずの資産に引き当てを積まねばならない事態に陥った金融機関は、適正な自己資本比率を維持するために、資産の圧縮を迫られた。いわゆるデレバレッジである。金融機関の融資削減がユーロ圏は勿論、東欧などの新興国でもクレジット・クランチを引き起こし、企業や家計の支出が抑制され、更なる景気悪化と財政状況の悪化を招いている。まさに悪循環である。10年にも及ぶ国債バブルの調整が悲惨な形で始まったのである。
この観点に立てば、調整を促すべく財政規律強化を前面に打ち出したEU首脳会議は本質的には正しいとも言える。しかし、問題はこの解決策が政治的に受け入れ可能かどうかである。財政規律強化策が具体化し、それを各議会が承認・実行に移すに当たっては、国民的な反発が生じ、それが再び市場の混乱を引き起こすのではないか。ユーロ圏が落ち着きを取り戻すまでには、まだ何度かの危機的状況を経ることになるのかも知れない。
クロワッサン