六本木柴犬『大吉』

大吉の注射のため、ミッドタウンに向かう途中、携帯電話へ仕事の連絡。

通話しながら歩いていると、

「アレッ、大吉君?」

「大ちゃん、こんにちわ~」

と、容姿端麗なモデル風の女性から、声を掛けられる。

その美し過ぎる女性と目が合うも、通話中だったので、軽い会釈しかできず残念。

大吉のことは知っているので、初対面ではないのだろうが、誰だろう?と記憶を辿るも、全く思い出せず。

以前も誰もが知っている某有名アイドルのМが大吉と遊んでくれていたが、その場では全く気付かなかったし・・・。



夜の散歩に向かうと、

「だいきち~」

と、後から甘ったるい女性の声。

振り返ると、やや千鳥足の酔っ払った女性。

「前に大吉に会った日、いいことがあったの~」

「今はシングルなんだけど、あの日は私が想いを寄せている男性と・・・」

「それ以来、大吉はキューピットなのよ~」

と、聞いてもいない話を延々とされる。

さらに、信号待ちをしている数人の見知らぬ女性に、

「この子、大吉っていうの~」

「大吉をナデナデすると、いいことが起こるわよ~」

と、声を掛けまくる。

声を掛けられた女性達も不思議そうな顔をしながらも、酔っ払った女性の迫力に負け、大吉を囲んで、みんなでナデナデ。

すると、いつの間にか、酔っ払った女性の姿はなく、皆茫然。


う~む、いったい誰だったんだ・・・?