『よく「サッカーは2点差は危険」と言われますが、実際のところどうなんですか?』という質問をいただきました。選手みんながどう思っているか分かりませんが、簡単に私の意見を述べてみたいと思います。

確かにサッカーの世界ではよくこのように言われ、私たちは小さい頃からこのように指導もされてきました。実際、これまでに2点差をひっくり返した経験もありますし、その逆もあったと思います。

2点差がひとたび1点差になれば、負けている方は俄然勢いが出て、もはやどちらが勝っているか分からないムードになります。そのまま同点や逆転になれば、一度勝利を手にしたような気になってしまっている分、追いつかれた方はショックです。特に守備陣にとっては2点取ってもらっておきながら勝ち点を落とすようなことがあれば、批判は免れません。

ただ私見としては、レベルが上がれば上がるほど、2点差が「特別に」危ないということはないと考えています。同点のときの方が戦いは当然難しいですし、1点差のときの方が緊張感や試合後の疲労感は高くなります。その分、2点入ったところで一瞬チームとして緊張が緩むという見方はできますが、レベルが高くなれば、2点差だからとプレーのレベルや集中の度合いを落としてしまうような選手は生き残ってはいけませんし、2点差をつけても何度も勝ち点を落とすようなチームでは優勝は難しいでしょう。

つまり、ただ単にサッカーはなかなか得点を取ることが難しく、1点でガラッと雰囲気が変わるスポーツであるというだけで、確かに2点差は2点差の難しさがありますが、特別なことではないように思います。

同じように、「格下との対戦はいつもより難しい」とか「国際試合は1つのミスが命取りになる」なんて言葉もよく聞かれますが、私はそれもあまりそのように特別には捉えていません。確かに慣れていないチームとの対戦はやり辛いところはありますが、ただどんな試合でもプロとして、特に「集中する」という点で同じレベルにしていれば、単純にレベルの高い相手の方が難しいと思っています。

つまり、問題が起こるとすればそれは自分の中の問題であり、2点差であるとか、格下であるとか、国際試合であるとか、そういう外的要因ではないということです。私はプロに入り、いろんな選手と接してきましたが、プロに入って差が出るのはこの外的要因に流されないという部分が大きいように思います。自分の中にしっかりとした目標やビジョンがあれば、そんなものに左右されてはいけないと考えるはずであり、そういう意味で、レベルが上がればこうしたことはあまり関係ないように思います。

ただ、サッカーは戦い方が多様にあり、また1点を取ることが本当に難しいスポーツであることで、どんな相手との対戦も難しくなる。それは紛れもない事実だと思います。だから、1点差も2点差も危険だし、格下との対戦もそうでない相手との対戦も難しいし、国際試合も国内の試合も1つのミスが命取りになります。だからこそ選手は、どんな試合も優劣をつけることなく、最初から最後まで、いつも同じ気持ちで、集中して戦い続けなくてはいけないのだと思います。