さすがタイ。アジア大会で勝ち進んだ影響で今週末の試合が突然延期になりました。来週はカップ戦の決勝なので、中断明けがいきなり決勝戦となり、その試合からリーグ最終節まで3週間で7試合を行うという最後まで超過密日程で行われることになりました。それにしても、どこかで負ける前提で日程を組んでいたんでしょうか(苦笑)。不思議です。

さて、タイのサッカーについて何度か話をしていますが、「実際のところ、レベルはどうなんだ?」というところが1番聞きたいことだという方も多いと思います。こういうテーマは文字にするととても危険な要素を孕んでいるので難しいところではありますが、それを踏まえてお話ししたいと思います。

私はタイプレミアリーグ(TPL)の他に、J1でのプレー経験しかありません。そのJ1との比較でいくと、やはりまだまだ対等に戦えるレベルにはないというのが正直な感想です。昨年のACLでブリラムというタイのクラブがベスト8に進み、今年も決勝トーナメントまであと一歩というところまで行きましたが、対戦した印象ではブリラムは取り組んでいることがタイでは頭一つ抜けているかなと思います。

TPLとJ1を比較してしまうとまだ全ての点で差はあるとは思いますが、大きな差としてあるのは、ボールを扱う技術よりも「サッカーを知る」という部分だと思います。顕著なのは、一人一人のボールタッチの回数が多く、ボールを持つ時間が長いことです。「後ろからリズムを作る」という概念がないのか、ボールを持ってからパスコースを探す選手ばかりで、これを何度指摘しても変えようという様子がないのは、そうした指導を受けてきていないのでしょう。

それ以外にも、3人目の動きと呼ばれるものや動き出し、守備においてもプレスや裏へ走る選手への対応など、ボールのないところで何をすべきかということにまだ考えが及んでいないように感じます。

と、このようにタイサッカーの課題を書いていくと、タイでプレーするのは簡単だと思われるかもしれませんが、それはまた話が違います。まず、私たちは外国人選手としてプレーしています。タイ人の選手よりいいプレーをするのは当たり前で、評価は他の外国人選手との比較になります。

外国人選手は中には代表経験があったり、ヨーロッパのトップリーグから来る選手もいて、年々レベルが上がっています。さらに、来年は通常のJリーグと同じようなレギュレーションになるとも言われていますが、今年は7人まで外国人選手の登録が認められています。そのうち試合に出られるのは4人なので、替えのきかない戦力になっていなければ、コンスタントに試合に出ることもできません。

さらに、他の選手との違いというものをここタイで見せるためには、ただ「日本での自分」を持ち込んだだけでは難しいと思います。サッカーをまだあまり知らないというのは相手選手だけでなく、当然味方選手もそうなので、日本では当たり前だと思っているようなフォローも得られません。それを周りに要求しても理解してもらうにはかなりの時間がかかります。しかし、外国人選手にはそんなに時間は与えてもらえず、タイでは契約があってもその途中で打ち切られることも日常茶飯事です。そのギリギリの中で早急な結果を出さなくてはいけない難しさはあると思います。

そうした中で、今シーズンも終わりに近づき、もちろんいいシーズンを過ごした選手もそうでない選手もいます。その中で、私から見て結果を出せている選手の共通項は「献身的であること」と「頭を使えること」、そして「走れること」。これらがタイの選手が最も苦手なことだからという理由もありますが、それが現代のサッカーのスタンダードなのだと思います。