今回のW杯で個人的に印象深いのが、国を背負って戦う選手たちの誇りと覚悟です。とりわけ、全国民の期待を直に受けながら戦うブラジル代表の選手たちのプレーや表情には心を揺さぶられます。

私が鹿島アントラーズに所属していた10年間に、たくさんのブラジル人と仕事をさせていただきました。彼らはそれぞれに性格もキャラクターも違いましたが、共通して言えるのは、負けず嫌いであるということでした。それも普通のレベルの負けず嫌いではありません。

鹿島では連戦が続いたときに、リフレッシュとリカバリーを兼ねて、サッカーバレー(手を使ってはいけないバレー)をすることがありました。オリベイラ監督時代に多かったのが、2人組のダブルスを勝ち抜き戦で行うものでした。皆さんには意外だと思いますが、私はヘディングによるアタックを駆使して大体、決勝戦まで上がっていました。

しかし、決勝戦はノーチャンスです。マルキ(マルキーニョス)とダニーロのコンビが立ちはだかっていたからです。彼らはどんな強烈なアタックも平気でコントロールしてしまいます。その上、その目は真剣そのもので、どれだけ点差が開いても容赦はありません。圧倒的な力の差があるのに、毎回勝ったら本当に嬉しそうにしていました。

10年間でお世話になった4人のブラジル人監督もそうでした。彼らにはもちろん戦術面の要求や指示もありますが、それを超越して勝てばOK、いい意味で結果オーライのところがあります。

もし監督の要求を遂行し、いい試合をして負けてしまっても、彼らは納得しません。時に理不尽だと思うこともありましたが、その勝つことへのこだわりが鹿島を作ってきたように思います。

相手あってのスポーツなので、時に「しょうがない」と思ってしまうような失点や敗戦があります。しかし、それを認めはじめると選手もどこかで責任逃れを始めてしまいます。逃げ道を作らせない、彼らの有無も言わせぬ勝利への執着心は、常に「勝つ」ことから逆算して試合を戦うことを教えてくれたように思います。

誰もができないようなプレーを披露することもプロスポーツの醍醐味だと思いますが、それ以上に、勝たなければいけないプレッシャーの中であらゆる可能性を信じて勝利を目指す、その戦術や合理性を超えたひたむきさが本当に示すべき選手の姿なんだと思います。