サッカーは、外から見て分析するのはとても難しいスポーツだと思います。そこで、ピッチで何が起こっているかを説明するのに、最近よく用いられる言葉が「ラインの高さ」です。確かにラインの位置を見るのは簡単です。しかし、僕はこの言葉が少し一人歩きしている気がします。

僕が違和感を感じるのは、ラインが高ければ「善」、低ければ「悪」のように捉えられていることです。ラインの高さは、チームの戦い方とセットになっていて、それだけで判断するものではありません。

大事なのはコンパクトであること、つまり選手の距離感が近い状態でプレッシャーをかけることです。チームとして、高い位置からプレッシャーをかけて相手ゴールに近い位置でボールを奪いたいなら、当然ラインを高く保たなくてはいけません。確かに、今のサッカーの主流はこの戦い方で、今の日本代表も基本的にはこのような戦い方を志向しています。

しかし、サッカーに正解はありません。ある程度低い位置にラインを作り、相手が攻めてくるのを待ち構えて、自陣ゴール前でコンパクトを作るのも、チームの戦い方とセットであれば問題はありません。今年のJリーグの上位陣はそれほど高いライン設定はしていないチームの方が多い気がします。

また、高いライン設定をするために一番大事なことは、センターバックにスピードがあるか、ではありません。(もちろんスピードも大事な要素ですが)いつラインを上げ、いつラインを下げるか、を分かっていることの方が大事だと思います。例えば鹿島では、当時まだ経験の浅かったイノ(伊野波雅彦)や韓国人のジョンス(イ・ジョンス)と組んだときより、剛さん(大岩剛)や浩二さん(中田浩二)と組んだときの方が、高いラインで戦っていました。

強いときの鹿島は、意図的に戦い方を変えていました。対戦相手の特徴や流れ、時間帯。みんなで意思統一をしながら、自分たちでゲームをコントロールしようとしていました。ラインの高さもその一つで、流れが悪いときに敢えて高くしてみたり、低くしてみたりと、スタイルを変えることで悪くなっている流れを変えようとしたり、逆に我慢の時間にしたりしていました。

いずれにしても、僕はサッカーのスタイルに良し悪しはないと思います。

先日、テレビを見ていたら、発展には多様性が必要で、グローバルな情報化社会になり世界が均一化していくと発展しなくなる恐れがある、というようなことを言っていました。サッカーにも当てはまる気がします。