僕のW杯の記憶は'90イタリア大会が最初です。といっても、夜遅くにお父さんに起こしてもらってテレビの前に行き、結局いつの間にかそのままソファで寝ていたので、試合の記憶はあまりありません。

僕にとってのW杯といえば、'94年アメリカ大会です。12歳だった僕はこの大会でイタリアのロベルトバッジョのファンになりました。

この大会をエースとして迎えたバッジョは、予選リーグで1点も取れず、批判にさらされていました。決勝トーナメント一回戦のナイジェリア戦も苦しい戦いを強いられ、イタリアは敗退寸前でした。そのロスタイムにバッジョはチームを救う同点ゴールを挙げました。僕はそのときのバッジョの解放されたような表情に心を打たれました。その試合の延長でもゴールを挙げたバッジョは、準々決勝でも残り数分の時間に決勝点を挙げ、準決勝でも2得点して、チームを決勝に導きました。

最後はPKを自ら外して優勝を逃しましたが、外した後の後ろ姿を含めてバッジョは僕にとってアイドルになりました。

バッジョは人を魅了するテクニックを持ったファンタジスタでしたが、僕が好きになったのはその精神力でした。その頃雑誌か何かで、バッジョのこんな言葉を目にしました。

「歴史に残る偉大な選手とは、ここ一番というときに力を発揮してきた選手のことを指すんだ。」

技術や能力ではなく、勝負所で力を発揮できた選手。なるほど、と思いました。それからずっと、これが僕のテーマになりました。

これまで、ギリギリで勝ち取ったものも勝ち取れなかったものもありますが、鹿島で7つものタイトルを取ることができたのは僕の誇りです。

勝負強さの正体は今だに掴めないままです。僕は毎日、少しずつでも自分のやるべきことを積み重ねて、その日そのときに力が発揮できることを信じるだけです。でもそれでいいんだと思います。自分で積み重ねた先の結果なら、それが自分なんだと思えるからです。


昨日の試合は、1-1の引き分けでした。僕は最後のチャンスを決め切ることができませんでした。これで6勝7分けで2位に転落です。また精進します。