先日、VRChatを始めた。

きっかけとしては、DiscordのVCでフレンドがやっていたからなんとなく、だ。

僕は元々、皆でワイワイゲームをやるのが好きだ。

たまたまマルチプレイできる丁度いいゲームを探していた時に、名前だけは知ってるVRChatをフレンドがやっていたから僕も始めた。

周りのフレも続々VRChatデビューを果たした。

丁度、良かった。

ゲームを始める動機なんてそんなもので良いのだ。

ゲームを始めてすぐに、僕たちはアバターミュージアムというワールドに案内された。

各所で販売されているアバターのサンプルが展示されていて、自由に試着できる。

一度試着したアバターは履歴からいつでも着替えることができる。着せ替えながらワイワイしてるだけで結構楽しいので、僕たちはすでにすっかりハマってしまった。

とりあえず美少女アバターに着替えて遊んでいるうちに、気づいてしまった。

これは、危険だ。

鏡に写ったかわいい顔が、自分の動きに連動してかわいい動きをしている。

下を向くと、首から下の体がリアルな目線で見える。

すごい没入感だ。

何かいけないものに”目覚めて”しまう気がする。

自分がカワイイ女の子である錯覚を、覚えてしまう気がする。

この世界から、戻ってこられなくなる。そんな恐怖を肌で感じた。

僕が美少女アバターを使うことに恐れを感じて、おっさんや化け物のアバターを好んで選ぶようになるまで、そう時間はかからなかった。

そうしておっさんアバターでワイワイ遊んでいるうちに、新たな遊びに手を出し始めた。

しゃがみやエモートでわいせつな構図を演出して撮影した、言うなればホモビごっこである。

別にそういう趣味でやってるわけじゃない。心が汚れた野郎どもが集まったときに必ずと言っていいほど発生する、悪ノリという奴だ。

我ながらなんとも下衆な、くだらない悪ふざけである。

カメラマン役のフレンドも拍手で応援してる。一体どういう感情なんだろうか。

自分で見てもあまりにもひどい絵面だ。この写真の連続でブラウザバックしなかった貴方は偉い。

ホモビごっこだけでなく、バナナまみれになっても楽しいし、シマエナガになっても楽しいし、ムキムキ米津まみれになっても楽しい。

何もかもひどい写真ばかりでどう考えても正しい楽しみ方ではないかもしれないが、何だかんだで僕たちはこのゲームを楽しんでいた。

 

そうこうしているうちに、僕は目撃してしまった。

元々VRchatをプレイしてると言っていたリア友と、ネットの男友達が美少女アバターで互いの顔や身体を触り合ってイチャイチャベタベタしている光景を、である。

 

彼らはVRトラッキングと言って、体につけた器具の動きに応じてキャラを動かしているらしい。

VR感覚(ファントムセンス)と言って、VR上で触れられた箇所が実際に触られたように錯覚する現象があるらしい。

 

VRChatであれば、バ美肉おじさん同士がイチャイチャしてることなんて、何の変哲もない普通の光景なのだろう。

だが、幼稚園からの知り合いである男リア友と、何年も前から知っているネットの男友達が、美少女の姿で眼の前でイチャコラしていて、それには現実の感覚もある程度リンクしている。

そしてそれは時折、ニップルをチラ見せしてくるし、男の乳首をつついてくる。

 

これだけのことが、僕には耐え難い光景であった。

あまりの衝撃すぎて、僕は彼らが触り合っているのを見るたびに悲鳴を上げ、スクショを撮ることすら嫌になっていた。

 

僕らが夢見たバーチャルリアリティは、辛く苦しい現実から逃避し、なりたい自分になってやりたい事をする理想郷では無かったのか。少なくとも、僕は漠然とそう思っていた。

 だとすれば、何故。

何故、現実世界より受け入れがたい光景が、僕の目の前に広がっている?

何も、彼らは悪い事をしているわけじゃない。誰にも迷惑はかけていないし、法を犯してる訳でもない。恐らくゲームの規約違反ですら無いだろう。

彼らはただ、ゲームシステムに則り、好きな事をして楽しんでいるだけだ。

 

だが、僕の中に溢れた何とも形容しがたい複雑な感情は何だろう。

例えるなら、まるで親父のズボンのポッケから男の娘風俗のレシートが出てきたような。押し入れから兄の女装写真が出てきたような。

生憎そういった経験は無いが、見てはいけない物を見てしまったような、純粋な恐怖に近い、得体のしれない感情が心の底に渦巻いている。

彼らも、僕たちがホモビごっこをしてふざけている間、こんな感情で眺めていたのかもしれない。

そんな悪ふざけばかりして遊んでいるから、ある時、リア友とフレンドに「こいつだけは公開鯖に入れるな、何をやるかわからん」「現実でもそんな事しないだろ」「キモ」等と、散々批判された。

人の趣味にとやかく言うつもりはないが、君たちにだけは言われたくない。

 

 

近未来設定の作品ではよくある話だ。仮想現実にハマった人があちら側に閉じ込められて現実世界に戻って来られなくなる。

それは思ったより、ナチュラルな形で現実的な物になりつつあるのかもしれない。

 

皆でこのゲームを始めて数日で、フレンドが次々VRゴーグルやアバター購入に手を出し始めた。

このゲームは危険だ。一度沼にハマったら戻ってこられなくなるかもしれない。

立ってるだけで美少女(男)にすり寄られてハニートラップを仕掛けられても、僕は決してこの世界には入り浸らない・・・

やめろ、僕は現実に帰るんだ

やめろ、こんなパパ活に僕が屈する理由が・・・

やめ・・・

離してくれぇぇぇ!!!!!!!!!!!