幻の鋼 ― ダマスクインゴット/ウーツインゴット | 無人のモグハウスで発見された手記

幻の鋼 ― ダマスクインゴット/ウーツインゴット

本日は、高級素材の代表格、“ダマスクインゴット”についてご説明しましょう。

このダマスクインゴット、おそらくその元ネタとなっているのは、長きに渡り神秘のベールに包まれていた幻の鋼材、ダマスカス鋼と思われます。


ダマスカス鋼は、その昔インドで生み出された特殊な製法を用いて精製する鋼材で、別名をウーツ鋼と言います(これについては後述)。
(当時の冶金術レベルからすれば)極めて優秀な鋼材として広く知られており、堅く、しなやかで、しかも決して錆びないという特徴を備えていたと言われています。


この特性はとりわけ剣の素材として用いたとき遺憾なく発揮され、ダマスカス鋼で造られた剣は特にダマスカスソードと呼ばれ、輸出された先の西洋でも高い評価を得ていました。


しかしこのダマスカス鋼、その製法や原理が解明されたのは比較的近代になってからで、門外不出として伝えられるうちに失われてしまったその製法は、長らくの間謎とされていました。


ダマスカス鋼の実体を一言で言い表すならば、強度の異なる二種類の金属が、完全に混ざり合うことなく一体となった金属です。
硬度の高い部分と、弾性に富んだ部分が互いを補い合う形で作用する為、従来の炭素鋼に比べて、優れた鋼材足り得たのです(ちなみに、この原理は日本刀のそれとよく似ています。日本刀も同様に複数の金属を張り合わせて鍛造して折れず、曲がらずを実現しています)。


さて、ではこのダマスカス鋼、どうやって精製していたのでしょう。
ダマスカス鋼は、一旦溶解させた鋳鋼を坩堝に入れ、そこでゆっくりと時間をかけて凝固させるというやり方で作り出されていました。


こうすると、まず融点の高い硬質な鋼が冷えて固まっていきますが、この時枝葉のように隙間が空いた状態で凝固が進みます。
器の中に入っている為、この隙間はまだ溶鉱の状態の融点の低い鋼が埋める形になります。
更に温度が下がり、全てが固体に戻った時には、二種類の金属が混ざり合うことなく融合している状態になるというわけです。
この為、ダマスカス鋼の表面には、美しいマーブル模様が浮かびます。
(ちなみに現代のダマスカス鋼は、こうした方法を使わずに、延ばした二種類の金属を重ねた状態で何度も折り返して鍛造して造ります)


最後に、“ウーツ鉱”“ウーツインゴット”としてFFXIに登場するウーツ鋼について説明しましょう。
ウーツ鋼はダマスク鋼の別名として一般的に言われていますが、その関係にも諸説あり、正確なところは判っていません(曰く、ただの別名。曰く、ダマスカスで生産されたウーツ鋼が特にダマスカス鋼と呼ばれた。曰く、ウーツ鋼はダマスカス鋼を不完全な技術で再現した模造品である。etc...)。
ただ、少なくとも“ウーツ鉱”というものから精製するような類の物でない事は、確かだと思われます。



ダマスクインゴット/波紋の浮き出た鋼の塊。南方の国から伝来したもの。
ウーツ鉱/天然のウーツ合金を含有する鉱石。
ウーツインゴット/ウーツ鉱を交えつつ加炭した鋼の塊。



ダマスクインゴットは、元々はSimurgh Rocがドロップする、いわゆるHNM素材でした。
現在では、獣神印章BCや、空NMからのドロップなど、その入手経路が拡大されています。
前衛系ジョブからの需要の高いホーバージョン の素材となるため、取引価格は常に高額を維持し続けています。
また最近では、両手斧レリックの第二段階への強化にも用いられています。


ウーツインゴットは、ウーツ鉱を素材として完成する合成品で、ウーツ鉱はデュナミスでのドロップアイテムです。
ウーツインゴットもまた、両手斧レリック第二段階の強化に必要となる品ですが、こちらはそれ以外の使い道が現在のところない(強いて言うなら、鍛冶スキル上げに使われますが)ため、ダマスクインゴットに比べると、遥かに低い値段で取引されています。