『 細 い 小 枝 ( 続 続 ・ 石 の 花 ) 』
前回のお話し 「細い小枝 1」
その頃の「くさはら村」には、まだ学校は無かったので、
上の子供たちは、よその家に読み書きを習いに行っていました。
ミーチャも、時々、付いて行きましたが、
余りに子供たちは、飲み込みが早いため、
いつも先生に褒めてもらっていました。
中でもミーチャは、ずば抜けていました。
ミーチャは、とにかく飲み込みが早く、
先生が説明を終える前に、もう解ってしまうのです。
上の2人の兄たちが、たどたどしく文字を読んでいても、
ミーチャはもう意味を理解しながら読んでいたのです。
『こんな生徒は初めてですわ。
とても素晴らしい。』
と、しきりにミーチャを褒めてくれました。
そこでダニーロとカーチャは、嬉しくなり、
ミーチャに、少し値の張る良い長靴をあつらえたのです。
ところが、この良い長靴の為に、
ダニーロ一家の生活は、大きく狂ってしまう事になったのです。
その年、領主の旦那は、この村で暮らしていました。
どうやらペテンブルグで、お金を使い果たしてしまったので、
それでまだ少しでもお金をかき集められないかと、
領地の村へとやって来たのでした。
鉱山もちの領主なのですから、
管理さえしっかりとしていれば、
お金をかき集められない事はありません。
ところが、ここでは、管理人や、書記どもが、
上手に金をくすめ盗って、帳簿を誤魔化していたのです。
領主の旦那には、それがまるきり見抜けない状態です。
ある時、旦那が村の道を馬車で通っていた時、
一軒の小屋の前で3人の子供が遊んでいるのを見たのです。
すると3人とも、立派な長靴を履いています。
旦那は子供たちに、こっちにおいでと手招きをしました。
ミーチャは、一度も領主の旦那を見た事は無かったのですが、
この男が、領主だと直感したのです。
立派な馬、きちんとした身なりの馭者(ぎょしゃ)、
ぴかぴかで立派な馬車、それに乗っている男も、
でっぷりと脂ぎっていて、
いちいち大変そうに身体を動かしています。
それに手元には、金色のにぎりの付いた、
高価そうなステッキも持っています。
ミーチャは少し怖かったのですが、
勇気を出して小さな弟たちの手を握ると、
馬車の所まで、歩いて行きました。
すると旦那は、
『お前らは、どこの子だ?』
と、しゃがれ声で尋ねたのです。
3人の中で一番年上のミーチャが、
『石細工のダニーロの子です。
僕は三男のミーチャで、この2人は僕の弟たちです。』
と落ち着いて返事をしました。
旦那はこれを聞くと、顔が真っ青になり、
息が詰まってしまいそうになったのです。
旦那は、声を引きずらせながら、
『おお、おおおお!
なんということだ!』
と言い、更に、
『おい、お前!それは何だ?』
と、ステッキで子供たちの足もとを差しました。
小さな子たちは、怖くて震えあがってしまい、
小屋へ走って逃げ去りました。
ミーチャは、立ち尽くしたまま、
旦那が何のことを聞いているのか解らず、
きょとんとしてしまったのです。
すると旦那はまた、同じ事を尋ねました。
『お前、それは、何だアー!!』
ミーチャは怖気ながら、
『地面です。』
と言うと、旦那はかすれ声で、
『どういうことだ! どういうことだ!』
と、喚き出したのです。
~本日は、これにて~
ここまで読んでくださって、誠にありがとでしたぁ。
おしまいっ。
