『 石 の 花 』
前回までのお話し 「石の花 1」 「石の花 2」
ところが、ダニーロにも、
1つだけ、上手にできる事があったのです。
それは角笛を吹くことです。
牛飼いのお爺さんに教えてもらい、
毎日、吹くうちに、お爺さんよりも、上手になったのです。
まるで立派な楽器を吹いているほど、上手に吹いたのです。
夕方、牛を追って村に帰って来ると、
村の若い娘や、おかみさんたちが
「ダニーロ、何か1曲吹いておくれ」
と、せがみに来るほどです。
そこでダニーロが、角笛を吹き始めます。
するとどの曲も、
それは今まで一度も聞いたことが無いメロディばかりです。
その美しい旋律と来たら、森がざわめいているような、
小川がサラサラと流れているような、
小鳥たちが歌っているような、
素晴しい調べとなって響き渡るのでした。
この綺麗なメロディの為に、おかみさんたちは
ダニーロに愛想良くしてくれるようになったのです。
破けた上着を繕ってくれたり、
長靴を履く時に、足に巻く布きれをくれたり、
新しいシャツを作ってくれたりしました。
それに食べ物も、皆が色々くれるようになったのです。
しかも、あの女よりも美味しい物をあげようと、
女たちは、競って食べ物をくれるようになったのです。
牛飼いのお爺さんも、ダニーロの吹く、
角笛の歌が、とても好きになりました。
しかし角笛を吹くのは良いのですが、
ひとつ、困ったことがあったのです。
ダニーロは、角笛を吹き始めると、
これまた牛の事をすっかりと忘れてしまうのです。
そんなダニーロに、不幸が起きたのも、
その角笛を吹いている時でした。
ダニーロは、角笛に夢中になってしまい、
何頭かの牛が、群れから離れてしまったのに気づきません。
夕方になり、村へ帰ろうとした時の事です。
あのブチの牛がいない。
鼻の頭の黒い牛がいない。
あの牛も、この牛もいないと、
牛飼いの男とダニーロは驚いてしまったのです。
2人は直ぐに探しに飛んで行ったのですが、
どこを探しても居ないのです。
それにすぐ先には、狼が出る人里離れた場所があります。
2人は、そこまで行き、やっと1頭だけは見付けたのです。
牛群れを追って村へ戻り、
2人は、これこれこう言う訳だと、
一部始終を村人たちに話しをしました。
それを聞いた村人たちは、それは大変だとばかりに、
皆が一斉にほうぼうに散って、牛を探しました。
馬をだして、遠くまで出かけた者もいました。
残念ながら、散ってしまった牛は結局は見つかりませんでした。
その頃の、仕置きはとても恐ろしい事でした。
どんな罪でも、背中を出させて、鞭で何度も打つのです。
それに居なくなってしまった牛の中の1頭は、
管理人の牛だったのです。
意地悪で乱暴者の管理人は、情け容赦なんかありません。
最初に、牛飼いのお爺さんを引き出させると、
背中を鞭で何度も打ちました。
そして次に、ダニーロの番です。
ところがダニーロは、余りにヒョロヒョロに痩せており、
管理人の所の、鞭打ちの役人でさえも、
『これじゃ、1度打っただけで伸びちまう。
下手すりゃ、1度であの世行きですぜ。
旦那、どうします?』
と言ったのですが、管理人は憐みも与えず、
鞭打ち役人に、鞭を振るわせたのです。
もの凄い音で、ダニーロの背中に鞭が打たれました。
ところが、ダニーロは声を出しません。
それに驚いた鞭打ちの役人は、再び鞭を打ちました。
今度も、ダニーロは黙っています。
三度目を打ちました。
それでもダニーロは、泣きも叫びもしません。
それで鞭打ちの役人は、キレて怒ってしまい、
力いっぱい鞭を打ちながら、
『お前が叫び声をあげるまで、何度も打ち据えてやる!
泣け! 叫べ! やめろと言ってみろ!』
と、何度も鞭を振るったのです。
ダニーロは、体中をブルブル震えさせながら、
涙がぽろぽろこぼれています。
しかし唇をかみしめ、声をあげません。
そしてとうとうダニーロは、力尽き、
気を失ってしまったのです。
管理人もその場にいましたが、
『こいつぁ、何て我慢強いんだ。
もしこのままこいつが死ななかったら、
こいつを今後、どこに奉公に出したらいいか、
今、わかったぞ。』
と、驚きながら言いました。
~本日は、これにて~
ここまで読んでくださって、誠にありがとでしたぁ。
おしまいっ。
