『 ク ジ ャ ク 石 の 箱 ( 続 ・ 山 の 女 王 )』



前回までのお話し  「クジャク石の箱 1」  「クジャク石の箱 2」  「クジャク石の箱 3」
「クジャク石の箱 4」  「クジャク石の箱 5」  「クジャク石の箱 6」  「クジャク石の箱 7」
「クジャク石の箱 8」  「クジャク石の箱 9」  「クジャク石の箱 10」  「クジャク石の箱 11」
「クジャク石の箱 12」  「クジャク石の箱 13」  「クジャク石の箱 14」  「クジャク石の箱 15」
「クジャク石の箱 16」  「クジャク石の箱 17」  「クジャク石の箱 18」  「クジャク石の箱 19」





 さて若旦那は、ペテルブルグに到着すると、

宝石と、自分の未来の許嫁の事を、

都中にふれて回りました。

そして、みんなに、クジャク石の小箱を見せて歩いたのです。

町の者たちは、若旦那の許嫁を

一日も早く見たいと思いました。

秋までに、若旦那は、ターニャの為に、家を用意し、

沢山の衣装や靴を、その家に運ばせました。

そんな時、ターニャから手紙が届いたのです。

町はずれの、とある女性の家に厄介になっている、

という連絡の手紙でした。

勿論すぐに、若旦那は、その家へ出かけました。



『なんていうことだ!

 こんな所に住もうなんて、

 ターニャ、お前は正気なのか?

 大きな家を用意してある、最高級の屋敷だぞ!

 ターニャ、すぐにそこに住むが良い。』



しかしターニャは、



『私は、ここが良いの。』



と言って、この女の家にしばらく滞在することにしたのです。



 宝石と、トゥルチャニーノフの若旦那の許嫁の話は、

女王陛下の耳にまで、届いておりました。

女王様は、



トゥルチャニーノフに、

 その者の許嫁を、私に見せに来るように伝えなさい。

 どうも、その娘の事で、世間が騒がしいようですからね。』



と言いつけたのです。



 若旦那はターニャの所にやって来て、

今すぐに、支度をするよう言いました。

とにかく宮殿に入れるような服を作り、

クジャク石の小箱の中の宝石を身に着けろと、言ったのです。

するとターニャは、



『衣装の事は心配しないで大丈夫。

 でも、小箱の宝石は、

 すまないけれども、しばらくお借りするわ。

 それから、いい?

 ここに迎えの馬車を来させたりしないでちょうだいね。

 私は、自分でそこまで行きたいのよ。

 あなたは、ただ、宮殿の表階段の所で、

 私が来るのを、待っていて頂戴ね。』



と言うと、それを聞いた若旦那は、不思議に思いました。

ターニャは、どこかから馬を手に入れたのか?

宮殿用の衣装は、どうしたのだろう?

でも、問いただすのばかりは、気が引けて聞けませんでした。



 そしてとうとう、宮殿に出向く日がやってきました。

絹やビロードで着飾った人々が、馬車で次々やってきます。

トゥルチャニーノフの若旦那と言えば、

朝早くから、表階段の所でそわそわとしていました。

許嫁がここに来るのを、今か今かと待っているのです。

他の者たちも、早く見たくて、石段に立って待っています。

ところがターニャはと言うと、

宝石を付けると、まるで田舎の娘の様に、

頭にスカーフをかぶり、自分の粗末なコートを羽織り、

静かに歩いて、宮殿までやって来たのです。

どうして農奴の娘が、宮殿を目指しているのだろう?

と、大勢の人たちが、ターニャの後ろからくっ付いて行きます。

そしてターニャが宮殿に入ろうとした時、

宮殿の番兵たちが、ターニャを通してくれません。

ここは田舎娘の来るところでは無い!

と、怒鳴りつけたのです。

トゥルチャニーノフの若旦那は、

遠くからターニャを見つけていましたが、

自分の許嫁が、宮殿へ歩いて来たこと、

それも酷いなりをして来たのを、

仲間の貴族たちに見られるのが恥ずかしくて、

慌てて、階段の横に隠れてしまったのです。

そんな若旦那の様子を、これまた遠目で確認したターニャは、

コートの前を大きく開けたのです。

すると番兵たちは、ドレスを着た美しいターニャに驚き、

直ぐに、中に通してくれました。

そしてターニャがスカーフを外し、コートを脱ぐと、

周りの者たちが一斉に、あーっと、溜息を漏らしたのです。



『一体どこの方でしょう。

 美しいわ。

 どこの国の女王様だろう?』



そんな声を聞いた、トゥルチャニーノフの若旦那は、

階段の横から姿を現し、自慢げに、



『これが私の許嫁ですよ。』



と、大声で周囲の人々に話したのです。



 すると、ターニャは、旦那を厳しく睨み付け、



『それはどうかしら?

 何故、私に嘘をついたの?

 どうして、表階段の所で待っていなかったの?』



と、責め立てました。



~本日は、これにて~




ここまで読んでくださって、誠にありがとでしたぁ。

おしまいっ。
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