『 ク ジ ャ ク 石 の 箱 ( 続 ・ 山 の 女 王 )』
前回までのお話し 「クジャク石の箱 1」 「クジャク石の箱 2」 「クジャク石の箱 3」
「クジャク石の箱 4」 「クジャク石の箱 5」 「クジャク石の箱 6」 「クジャク石の箱 7」
「クジャク石の箱 8」 「クジャク石の箱 9」 「クジャク石の箱 10」 「クジャク石の箱 11」
「クジャク石の箱 12」 「クジャク石の箱 13」
「むちうて氏」の奥さんは、
大きな鏡の前に立つと、自分に宝石を付けてみました。
最初は、髪飾りを付けました。
するとどういう事か?
髪がよれ、引っ張られて、痛くてたまらないのです。
やっとの思いで、髪から飾を外しました。
次は、イヤリングを取り出すと、耳に付けたのです。
するとまた、付けた途端に、
耳たぶが千切れそうに引っ張られるのです。
慌てて、奥さんはイヤリングも外しました。
そしてこれはどうだとばかりに、指輪をはめてみます。
すると指枷(ゆびかせ)でも、はめられたように、
ぐいぐいと、指輪が指を締め付けるのです。
奥さんは、シャボンを指に付け、
やっとの思いで、指輪を外す事が出来たのです。
これを見た夫の「むちうて氏」は、
『どうやらお前の様な者が、
身につけることが出来る代物ではなさそうだな。』
と、冷たく言い放ちました。
奥さんは、
(これは一体どういう事?
町に行って、宝石の職人に見せてみなくては!
そして私に合うように作り直してもらいましょう。
ただ宝石をすり替えられないようにだけは、
しっかり注意しなくては!)
と、考えると、翌朝早く、馬車で町へ出かけました。
トロイカ(3頭立ての馬車)でならば、
町も、そう遠くはありません。
この町の中で1番腕利きの職人は誰かと、
数名に名を聞いて歩くと、
奥さんは、言われた男の家に真っ直ぐに向かいました。
男はかなりの高齢で、大変な頑固者でした。
しかし、仕事だけはこのお爺さんに敵う者はいません。
お爺さんは、小箱を見ると、
誰から買い受けたのかと聞いてきました。
奥さんは、知っている限りのことを話しました。
お爺さんは、もう一度、小箱を見ましたが、
中の宝石を、一度も見ようとはしません。
『いくらお金を貰っても、これは引き受けるわけにはいかん。
これはこの辺りの職人の仕事じゃねえ。
これを作った職人と、張り合う事など、とても出来ねえ。』
と、お爺さんは言うと、小箱を返しました。
奥さんは、どうして断られるのか、意味が解りません。
お金ならいくらでも出すと言っているのに、
やらないと言い続けるお爺さんに腹を立て、
別の職人の所へ、駆け込みました。
ところが、その職人は、前のお爺さんと
申し合わせでもしているのか、
小箱をじっくりと眺めているのに、中の宝石を見ることはせず、
どんなに奥さんが、自分のサイズに合わせて欲しいと頼んでも、
どうしても、引き受けてくれないのです。
奥さんは、それでもどうしても直してもらいたいので、
別の職人の所へ行き、
『これは、ペテルブルグで作られた物よ。』
と、嘘を言ってみました。
しかし職人は、ただただ大笑いをして、
『あははは。解っているんですよ。
これがどこで作られた物だかなんてね。
これを作った職人の事も、沢山聞いていますよ。
この職人と、腕を競うおうだなんて、
私らには、出来やしませんよ。
この職人は、たった1人の人にだけ合うように、
これを作ったのだから、
どんな事をしたって、これは他の人には合わないんですよ。』
と、言いました。
~本日は、これにて~
ここまで読んでくださって、誠にありがとでしたぁ。
おしまいっ。
