『 ク ジ ャ ク 石 の 箱 ( 続 ・ 山 の 女 王 )』
前回までのお話し 「クジャク石の箱 1」 「クジャク石の箱 2」 「クジャク石の箱 3」
「クジャク石の箱 4」 「クジャク石の箱 5」 「クジャク石の箱 6」 「クジャク石の箱 7」
「クジャク石の箱 8」 「クジャク石の箱 9」 「クジャク石の箱 10」 「クジャク石の箱 11」
「クジャク石の箱 12」
奥さんが出て行くと、外に出ていた商人たちが
再び、家の中に押し寄せてきました。
『小箱はどうした?』
『ええ、売ったわ。』
『いくらで売ったんだ。』
『前に言ったとおり、2千よ。』
『なんだって?
気でも狂ったのか?
余所者に渡して、土地のもんにゃ売らないっていうのか!』
商人たちは、喚くと、再び、2千から値を吊り上げ、
ナースチャの気を引こうとしたのです。
しかし、ナースチャはそんな餌には、飛びつきはしません。
『これは、あんた方のいつもの手じゃない。
ああだ、こうだと、誤魔化してばかりいるけれど、
私はその手には乗らないわ。
奥さんにもう約束してしまったのだから、
これでおしまいよ!』
と、大勢の商人たちに啖呵を切ったのでした。
「むちうて氏」の奥さんは、家に戻ると、
直ぐに、金を持って引き返してきました。
金をナースチャに手渡すと、
小箱を引っ掴み、再び家に大急ぎで帰って行ったのです。
その時、戸口で、ターニャにばったり出会いました。
ターニャはどこかに出かけていて、
小箱が売れたことをまだ知りません。
見ると、どこかの金持ちの奥さんが、
小箱を抱えて出て行きます。
ターニャは、目を凝らして奥さんを見つめました。
しかしこの奥さんは、巡礼女に数年前に見せてもらった、
あの美しい女性ではありませんでした。
同じ様に、奥さんも、ターニャの事をじろじろと見ます。
『びっくりさせないでよ!
いったい、この娘は誰なの?』
『この子は、私の娘です。
今お買いになった小箱は、
この子の物になるはずだったのですよ。
暮しが何とかなったら、売払うつもりはありませんでした。
この子は幼い頃から、その宝石で遊ぶのが大好きでした。
遊んでは、宝石に感心しているんですよ。
着けていると、温かくなるとか、気分が良いと言ってね。
でも、そんな事をいまさら言っても、もう仕方ないですよ。
もう売ってしまったのですからね。』
『そんな風に考えてはダメよ。
この宝石に相応しい所を、私が見つけるわ。』
と、奥さんは、ナースチャに言いましたが、
本心では、
(この緑色の目の娘が、
自分の美しさに全く気付いて無くて良かったわ。
もしこの娘が、ペテルブルグに現われでもしたら、
王様だって、心を魅かれてしまい、
この子の思うがままだわ。
私のあのバカな若旦那のトゥルチャニーノフが、
この娘に出遭わないようにしなくちゃね。)
と、考えたのです。
こうして「むちうて氏」の奥さんは、
ナースチャの家を出て行きました。
そして家に帰り着くと、
『ねえ、あなた、私には、
あなたや、若旦那のトゥルチャニーノフなんか、
もうどうだって良くなっちゃったわ。
何かあったら、こんな家、すぐに出て行ってやるからね。
ペテルブルグか、それとも外国の方がいいかしら?
向こうでこの小箱を売ったなら、
あなた程度の男なら、2ダースは買えるわね。』
と、「むちうて氏」に威張り散らして言うのでした。
そう言いながら、小箱の中の宝石を取り出しながら、
大きな鏡の前に立つと、自分に付けてみたのです。
~本日は、これにて~
ここまで読んでくださって、誠にありがとでしたぁ。
おしまいっ。
