『 ク ジ ャ ク 石 の 箱 ( 続 ・ 山 の 女 王 )』



前回までのお話し  「クジャク石の箱 1」  「クジャク石の箱 2」  「クジャク石の箱 3」
「クジャク石の箱 4」  「クジャク石の箱 5」  「クジャク石の箱 6」





ナースチャは承知しないわけには行かなくなりました。



『そこまでおっしゃるのなら。

 それに材料を、分けてくださると言うのなら・・・

 この子が覚えられるだけ、刺繍を教えてやってください。

 本当に、とてもありがたい事ですわ。』



 そこで巡礼風の女は、ターニャに刺繍を教え始めました。

すると不思議な事に、ターニャは、

まるで、この仕事を前から知っていたように、

あっという間に、コツをすっかりと飲みこんでしまったのです。

それからもう1つ、不思議な事がありました。

ターニャは、他人にはもちろん、

家族の者にも、愛想の良い娘ではありません。

しかしこの女には、ひどく甘えるのです。

ナースチャは、娘のそんな姿を見て、

なにやら苦々しく思うのです。



『あの子ったら、新しい親を見つけたみたいだわ。

 私には、ちっとも懐かないのに、

 あの女には甘えっぱなしで・・・』



 その上、巡礼風の女も始終ターニャのことを、

私の可愛い子や、とか、私の娘や、と呼ぶので、

ナースチャのイライラはますます募っていくのです。

親が付けた、「ターニャ」という名を呼ぼうともしません。

ターニャは、ナースチャ

母として悔しい思いをしている事を、

うすうす気づいてはいましたが、

でもどうしても、気づくと女に甘えてしまうのです。

更には、女の事をすっかり信用して、

クジャク石の小箱の事までも話してしまったのです。



『家の中にはね、お父さんの大切な形見の箱があるのよ。

 それはクジャク石で出来ている小箱なの。

 宝石がいっぱい入っているわ。

 それをねずっと見ていても、私はぜんぜん飽きないのよ。』



『私にも見せてくれるかい?娘や。』



と、女が尋ねました。



 ターニャは、決して余所の人に見せてはならない事を、

すっかりと忘れてしまっていました。



『ええ、良いわよ。

 見せてあげるわ。

 でも家に誰にも居なくなった時に、こっそりとね。』



と、ターニャは答えました。



 見せると約束をした翌日、

折りを見て、ターニャは女と共に地下の蔵へ降りました。

そしてターニャは、箱を取り出して見せたのです。

女は、箱をチラッと見てから、



『付けてごらん。その方が良く見えるわ。』



と、言いました。

ターニャも喜んで、宝石を身につけ始めます。

すると女はしきりに、ターニャを褒めるのです。



『とてもすてきだわ、娘よ。

 でもね、これはちょっと着ける時に直した方が良いわね。』



 女は、ターニャの傍に立ち、

指で宝石を突っつきました。

すると女の指の触れた宝石は、

今までよりももっと、キラキラと輝きを増したのです。

ターニャは、自分がどんなに光り輝いているか、

全く気付いておりません。

女は、



『娘よ、真っ直ぐに立ってごらん。』



と言うと、ターニャをしっかりと立たせました。



~本日は、これにて~




ここまで読んでくださって、誠にありがとでしたぁ。

おしまいっ。
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