『 山 の 女 王 』



前回までのお話し  「山の女王 1」  「山の女王 2」  「山の女王 3」




 スチュパーンは考えに考えて、ついに決心を固めました。



(ともかく、女王様の言いつけどおりにやってみよう。)



 次の朝早く、鉱抗(こうこう)の降り口の付近に、

大勢が集まっていました。

そこに管理人がやって来たのです。

皆は、帽子を取ってお辞儀はしましたが、

誰も彼も、黙りこくっておりました。

その時、スチュパーンは、管理人の方へと歩み寄ると、



『俺は昨日、山の女王様に出遭った!

 女王様は、あんたに伝えるようにこう言った!

 女王様は、「鼻っつまみのくず」、

 つまりあんたに、クラスノゴールカ鉱山から、

 とっとと消え失せろと、お言いつけになっていたぞ。

 もしあんたが、女王様の鉄の帽子を

 これからも穿り返すなら、

 グミョーシキ銅山の銅を、そっくり山の奥深くに埋めて、

 誰にも掘り出せないようにしてやるそうだ。』



と、大声を張り上げ、女王の言葉を伝えました。



 それを聞いた管理人は、怒りで口髭までピクピク動かし、



『なんだって!

 お前、酔っ払っておるんか!

 それとも、気が狂ったか?

 どこの女王様だと?

 お前、誰に向かってそんな口をきいているんだ!

 わかってるのか?

 いいか! 鉱山でたっぷりと痛めつけてやるからな!』



『そりゃぁ、あんたの勝手だ。

 ただ女王様は、俺にそう伝えろって言ったんだ!』



と、スチュパーンは言いました。



『おい!コイツに鞭をくれてやれ!

 それから鉱山へおろし、

 採掘場に、縛り付けておくんだ!

 死なない程度に、コイツには犬の餌でもくれてやれ!

 容赦なく、思い知らせてやれ!

 はむかう様だったら、何度でも殴りつけろ!』



 スチュパーンは、容赦なく鞭で打たれてしまいました。

そして鉱山の採掘場へと、引き立てて行ったのです。



 鉱山の採掘場では無い場所は、

どこもかしこも、そこに比べれば天国でした。

良い鉱石など、そこではもう全く取れない為に、

もう廃坑にするべき場所だったのです。

その上、採掘場内のあちらこちらから、

水が沁み出て来てしまっていたため、

足元は、ぬかるんでいるのです。



 そんな場所で、スチュパーンは、長い鎖で繋がれたのです。

働かせる為に、鎖は長く長くされたのです。

この時代のロシアは、農奴制でした。

人を人とも思わず、家畜の様に扱ったのです。



 監督は、スチュパーンに、



『ここでちょっと涼むんだな。

 混じりっ気のない上等のクジャク石を

 山もりで採掘しろ!』



そう言うと、途方もない数のクジャク石を見つけろと、

無理難題を押し付けたのでした。



 しかし、仕方がないのです。

監督が行ってしまうと、

スチュパーンは、ツルハシを振り出しました。

この男は元来、とても真面目で働き者だったので、

何があっても、一所懸命に働いたのです。



 そうやってスチュパーンが、ツルハシで、

どんどん掘っていくと、驚いたことに、

クジャク石が、ゴロゴロと出て来たのです。

もう廃坑にするしかないと思われていた、採石場なのに。

それにいつの間にか、水が引いており、

もうジメジメした空気も無くなっていたのです。



(ああ、良かった。

 女王様は、俺の事を思い出してくれたんだな。)



と、スチュパーンは、心の中で思いました。



~本日は、これにて~




ここまで読んでくださって、誠にありがとでしたぁ。

おしまいっ。
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