『 アッシリアの王、アッサルハードンの伝説 』



前回までのお話し  「アッシリア王アッサルハードンの伝説 1」
「アッシリア王アッサルハードンの伝説 2」





 大使たちは、やっと一か月後に戻ってきました。

しかし可哀想なことに、

全員、鼻を削がれ、耳を切られて帰って来たのです。



 アッサルハードン王が命じて、

ライーリエ王に伝えさせたのは、



ライーリエ王の大使たちに、なされた事は、

 やがて、ライーリエ王自身に、なされる事である!

 もしそれを拒みたいと思うならば、

 王が即刻、アッサルハードン王へ、

 彼が定めた、貢物、金、銀、糸杉などを献上し、

 自分自身が敬意を表しに出頭し、

 彼の足もとに、平伏さねばならぬ!』



と、伝えて来たのでした。



 以前は、アッサルハードンであったライーリエ王は、

再度、豪族たちを集めて、

今後、取るべき策について協議しました。

そこに居た全ての者たちは、口を揃えて、

今、やるべきことは、

悪王、アッサルハードンからの攻撃を待たずに、

こちらから先に、悪王を倒すべく軍隊を進めましょう、

と、進言しました。

王は、それに同意しました。

そして自らが、軍隊の指揮に当り、遠征の途に登ったのです。

征旅は7日間に及びました。

王は、毎日のように軍隊を巡回し、

麾下(きか(旗下))の将士たちの士気を鼓舞しました。

8日目にライーリエ王の軍隊は、大河の岸の広い谷間で、

悪王、アッサルハードン王の軍隊に遭遇したのです。

ライーリエ王の軍隊は、勇敢に戦いました。

以前にはアッサルハードンであった、ライーリエは、

敵が、蟻の様に山から押し寄せて、谷を埋め尽くし、

麾下(きか)の軍隊を席巻(せっけん)するのを見て、

二輪の馬車(当時の戦車)に搭乗したまま、

戦闘の真っただ中へ乗り込んで、

敵を刺したり、斬殺したり、戦ったのです。

しかしライーリエ王の軍隊は、数百を数えるにすぎず、

数千の大群の前には、敵いませんでした。

ライーリエは怪我を負い、自分が捕虜になると悟ったのです。



 9日間、ライーリエは他の捕虜たちと共に、

囚われの身をアッサルハードンの軍隊に囲まれて運ばれました。

10日目に彼は、ニネヴィヤに到着し、投獄されました。



 ライーリエは飢えや負傷よりも、

恥と無力さに、自分自身を怒り苦しみ続けました。

彼は自分に対して、

自分に受けた、全ての悪に対して、

敵に報いるだけの力が無い事を後悔したのです。

今、ライーリエに出来る、ただ1つの事、

それは自分が受けている苦悩、

それを見る喜びを、敵に与えないようにすること、

ただ、それだけでした。

それを決めたライーリエは、

今後、自分の身にどんな事が起きようとも、

一言も、何も言わず、男らしく全てを堪えると、

心の中で、堅く決心したのでした。



 20日間、ライーリエは、刑を待ちながら、

檻の中で座り続けました。

彼は、肉親や、友人たちが刑を執行されるために、

引かれていくのを目にし続けました。

ある者は、手足を切り落とされ、

ある者は、生きながら皮をはがされたのです。

その呻き声を、ライーリエはずっと聞き続けたのです。

しかし、ライーリエは、不安も憐憫(れんびん)も、恐怖も、

一切、面に表しませんでした。

そしてライーリエは、彼の愛する妻が、

宦官(かんがん)たちに、戒めを付けられたまま、

引いて行かれるのを目にしました。

妻は、アッサルハードンの女奴隷として、

差し出されることも理解しておりましたが、

ライーリエは、これも憐憫の情なしに堪え通りしたのです。



 やがて2人の刑手が檻を開き、

革紐で、ライーリエの両腕を後手に縛り上げ、

まだ一面の血が乾かぬ刑場へと引っ立てて行きました。

たった今その上で殺された、ライーリエの友の身体から、

抜き取ったばかりの鋭く尖り、血まみれの杭(くい)を見ました。

そしてその杭は、次に、自分を処刑するために、

友の身体から抜き取った事を、ライーリエは察知しました。



 ライーリエには、もう不要である衣類が剥ぎ取られました。

ライーリエは、いつかは逞しく美しかった自分の身体の、

あまりに酷い、やつれ方に、

一瞬、怖気づきましたが、それを振り払いました。



その瞬間、2人の刑手が、

やせ細ったライーリエの両腕を掴み、その身体を持ち上げ、

血まみれの鋭い杭に突き刺そうとしたのです。



~本日は、これにて~




ここまで読んでくださって、誠にありがとでしたぁ。

おしまいっ。
ペタしてね