『 貧 し い 者 と 、 金 持 ち 』



前回までのお話し  「貧しい者と、金持ち 1」  「貧しい者と、金持ち 2」




 金持ちの妻は、貧しかった家の主の言葉を、

最後まで聞かずに、急いで走って家へ戻り、

今聞いてきた一部始終を夫に話して聞かせました。

すると夫は、驚きながら言いました。



『わしは、この自分の身体を引き裂いてしまいたいよ。

 わし自身を、打ちのめしてやりたい。

 わしが、前から そうと知ってさえいたらなぁ。

 その見たことも無い旅の人は、

 最初、この家に来たのだよ。

 そしてこの家に、泊めてくれと言ったのだよ。

 だが、それをわしが断っちまったのだよ。』



『さあ、あなた、急いで馬に乗って!

 そしたらあなたは、まだその旅の人に追いつけるはずよ。

 そして、あなたも3つの望みを、叶えてもらいなさいな。』



と、妻は夫に言いながら、急かしました。



 金持ちは、それは良い考えだとばかりに、

言われた通り、馬を飛ばせて行きました。

そして神様に追いつく事が出来たのです。



 すると金持ちの男は、

とても上手に愛想よく、旅人に話しかけたのです。



 そして昨晩は、家の中に入れてあげられなかった事を、

どうか悪く思わないようにと、まず言いました。

それから、自分が入口の戸の鍵を探していた間に、

あなたはもう、立ち退かれてしまったのだとも言いました。

そしてもしも旅の帰りに、再びこの道を通るのならば、

きっと我が家に立ち寄ってくださいね、とも言いました。



『はい、私が又いつか戻ってさえ来ましたら、

 あなたの家にも、寄らせていただきましょう。』



と、神様は言いました。

すると金持ちの男は、

自分もあの向かいの家の男の様に、

3つの望みを言っても良いかと、尋ねました。



 すると神様は、良いですよ、と、答えました。

更に、神様は、



『望みを言っても構わないけれども、

 それはお前にとって、ちっとも有り難く無い事だから、

 かえって、何も望まない方が良いかも知れませんよ。』



とも言ったのです。

しかし金持ちの男は、

それが確かに叶えられる、とさえ解っておれば、

必ず私の幸福になる事を、探して願ってみせると言いました。



 すると神様は言ったのです。



『すぐに馬に乗って、家に帰りなさい。

 お前の言う3つの望みは、きっと叶えてやろうね。』



 こうして金持ちは、願いが叶い、

馬に乗って帰る途中で、一体何を望んだら良いかと、

頭をひねりつづけました。

金持ちは、考えに耽った余りに、

馬の手綱から手を放してしまいました。

すると馬は突然、ピョンピョンと跳ねまわり出しました。

そのせいで、金持ちは考えがまとまらくなったのです。



『おいおい、大人しくしなさい、リーゼ(馬の名)』



 しかし馬は全く言うことを聞かず、

今度は後ろ足で、立ち上がろうとさえしたのです。

そこで金持ちはとうとう腹を立て、



『何してるんだ、クソ馬が!

 お前の首なんか、折れっちまえばいいんだ!』



 イライラして、大声で叫んでしまいました。

するとその途端、馬はドシンと倒れこみ、

そのままピクリとも動かなくなってしまいました。

金持ちの馬は、首が折れて死んでしまったのでした。



 しかしこれで、金持ちの願いは1つ叶えられました。



 ところが、この男は生まれつきケチだったので、

鞍をそのまま置いて行こうとはしませんでした。

鞍を馬から切り離すと、それを背負いながら、

とぼとぼと歩いて行くより他は、ありませんでした。



『クソ、願いごとの1つ目がこんな形で終わるとは。

 しかし、わしにはまだ2つの望みが残っている!』



と、考えながら、金持ちは自分の心を慰めました。



~本日は、これにて~




ここまで読んでくださって、誠にありがとでしたぁ。

おしまいっ。
ペタしてね