『 貧 し い 者 と 、 金 持 ち 』




 昔々、まだ神様が人の姿で地上を歩いて、

旅をされていた頃のことです。



 ある晩、神様は疲れはて、次の宿に辿り着けない内に、

日がとっぷりと暮れてしまいました。

真っ暗闇の中、神様は灯りを求めて歩きました。

すると、神様の行く道の傍に、

2軒の家が向かい合って建っておりました。

片方の家は、とても大きくとても裕福そうでした。

しかしもう一方は、とても小さく、みすぼらしい家でした。

大きな家の持ち主は、とても金持ちでした。

そして小さな家には、とても貧しい者が住んでいました。



 そこで神様は、



『金持ちならば、

 私が一晩泊まっても、迷惑をかけることは無かろう。

 今夜は、あの家で泊まるとしよう。』



と思われ、大きな家のドアをトントンと叩きました。

すると中から金持ちの主人がドアについた小窓を開け、

何の用だと尋ねてきました。

そこで神様は、



『どうか一晩だけ、私に宿を貸してください。』



と、伝えたのです。



 ところが金持ちの男は、旅の男を頭の先から爪先まで、

ジロジロと眺めていましたが、

粗末な着物を着た神様が、

お金を持っているようには、見えなかったので、

首を横に振りながら、



『お前さんは泊めてやるわけにはいかないね。

 私の家の部屋は、どの部屋も、

 菜や、種で、いっぱいなんだよ。

 戸を叩く人を、その度にみんな泊めていたら、

 わしは、今に貧乏になっちまうよ。

 まあ、どこかよそに泊めてもらうんだな。』



と、言いました。



 こうして金持ちは、ドアの小窓をぴしゃりと閉め、

神様を、夜道へ放置したのです。



 そこで神様は、金持ちの家に背を向けると、

今度は向かい側の小さな家に向かいました。

すると神様が戸をトントンと叩かぬ内に、

貧しい家の主は戸をあけ、

旅人に、中に入るように勧めたのです。



『どうぞ私の家に泊まっていってくださいな。

 もう外は真っ暗です。

 今から、これ以上先に進む事は危険ですよ。』



その言葉に、神様は嬉しくなりました。

こうして神様は、この貧しい者の家に入って行きました。

貧しい男の妻も、旅人に手を差し出すと、

良く来て下さいましたねと、笑顔で挨拶をし



『どうかゆっくり寛いで行ってくださいね。

 何も、お構いは出来ませんが、どうか許してください。

 私たちには、あまり持ち合わせの物はありませんが、

 出来る限りの事をさせていただきますよ。』



と、言いました。

それからジャガイモを火にかけると、

それが煮えるまでの間に、旅人にミルクをあげようと、

山羊の乳を搾り始めました。



 こうして食事の用意が出来ると、神様はテーブルに着き、

家の者たちと共に食べました。

神様は、こんなに粗末な食べ物でも美味しく食べたのです。

それというのも、常に笑顔の夫婦の顔が、

神様の傍らにあったからです。



 食事も済み、いよいよ休む時が来ると、

妻は夫をこっそりと呼び、そして言いました。



~今日は、ここまで~




ここまで読んでくださって、誠にありがとでしたぁ。

つづくですっ。
ペタしてね