『 眠 り の 精 』



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『どうかお母様の指ぬきの中に、お座りくださいませ。』



と、小さな女の二十日鼠が言いました。



『そうしていただければ、

 わたくしが、あなたを引っ張ってまりますから。』



『おや、お嬢さんに、そんなお骨折りをさせては、

 申し訳もありません。』



と、ヤルマールは、礼儀正しく言いました。

こうして、みんなは、二十日鼠の結婚式へ出かけました。



 初めに、みんなは、床下の長い廊下に入りました。

そこは指ぬきに乗って、やっと通れるくらいの高さでした。

腐った木の切れ端の明かりが置いてあるので、

廊下中が明るくなっていました。



『ここは良い匂いがしやしませんか?』



と、ヤルマールを引っ張っている女の二十日鼠が言いました。



『ここは廊下中に、ベーコンの皮が

 敷き詰められているんですよ。

 こんなに素敵な事はありませんわ。』



 まもなく、みんなは式場へ来ました。

右側には小さな二十日鼠の婦人たちが、立っていて、

ひそひそ声で話しては、ふざけ合っていました。

左側には、二十日鼠の紳士たちが立っていて、

前足で、膝を撫でていました。

部屋の真ん中には、花嫁、花婿の姿が見えました。

二人は中身をくりぬいたチーズの皮の中に立っていて、

皆の見ている前で、何度も何度もキスをしていました。

無理もありません。

二人はもう婚約しているのですし、

それに今にも結婚式をあげようというのですからね。



 それからお客様が、ますます増えてきました。

とうとう終いには、皆が皆、お互いを、

踏み潰してしまいそうになるほど、いっぱいになりました。

その上、花嫁と花婿が戸口に立っていたものですから、

誰一人、出ることが出来ません。

部屋の中にも、廊下と同じように、

ベーコンの皮が敷き詰められてありました。

これがご馳走の全部だったのです。

デザートには、えんどう豆が1粒出ました。

このえんどう豆には、両家の家族たちが、

花嫁と花婿の名前を歯で刻み付けておりました。

といっても、頭文字だけですがね。

こう言う所は、普通の人間の結婚式とは全く違う物でした。



 二十日鼠たちは、口々に立派な結婚式だった、

それに話も面白かったと、言い合いました。



 そこでヤルマールも家に帰りました。

こうして、本当に上品で素晴らしい宴会に行ってきたのです。

ただ身体を縮ませて、小さくなった為に、

小さなヤルマールには着られる服が無く、

錫の兵隊さんの軍服を借りねばならなかったのですがね。



~今日はこれにて~




ここまで読んでくださって、誠にありがとでしたぁ。

おしまいっ。
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