『 人 魚 の 姫 』
前回のお話し 「人魚の姫 1」 「人魚の姫 2」 「人魚の姫 3」 「人魚の姫 4」
「人魚の姫 5」 「人魚の姫 6」 「人魚の姫 7」 「人魚の姫 8」 「人魚の姫 9」
「人魚の姫 10」 「人魚の姫 11」 「人魚の姫 12」 「人魚の姫 13」 「人魚の姫 14」
『ああ、王子様は私が命を助けてあげたことを、
何もご存じないのだわ・・・
王子様を海の上の、修道院のある森の所まで、
お連れしたのは、私だというのに、
その後にやってきた娘さんが、助けてくれたと思い、
王子様は、私よりもその娘さんを好いているのね・・・』
お姫様は心の中で思い、深いため息をつきました。
けれども涙を流し、泣くことはできませんでした。
『今、その娘さんは一生、修道院に仕えると
そう王子様は仰ったわ。
そうすると、あの娘さんは外には出てこないんだわ。
王子様と娘さんはもう二度と、会えないのね。
それに比べれば、私は毎日毎日、お顔を見ている。
私が王子様のお世話をしてあげましょう。
そうして王子様の為なら、この命も喜んで捧げましょう。』
ところがその内に、王子様は結婚する事になったのです。
お隣の国の美しい王女様をお妃に迎えるとのことなのです。
その為に、船も大層美しく飾り付けられました。
王子様は隣の国を見るために、旅に出ると言われましたが、
本当はその王女様にお会いになる為に出掛けるのでした。
お供の人たちも、大勢付いて行くのです。
『僕は、旅に出なければならない。
美しい王女にあって来なければならないんだよ。
僕のお父様とお母様がそうしなさいと言うからね。
しかしその王女を何が何でも、
お嫁さんにして帰ってくるようにとは、
お二人とも言ってはいないよ。
僕が、その王女を好きになるはずがないんだから。
だって修道院の、あの娘さんに似ているはずがないんだもの。
あの娘さんに似ているのは、お前だけだよ。
僕がいつかお嫁さんを選ばなければならないなら、
いっそ、お前を選ぼうと思うよ。
口はきけないが、目で物を言う、可愛いお前をだよ。』
こう言うと、王子様はお姫様の赤い唇にキスをしました。
そしてお姫様の長い髪の毛をいじりながら、
お姫様の胸に頭を押し当てました。
お姫様の心は、人間の幸せと、
死ぬことの中魂とを、夢に見ているのでした。
『だけど、海は怖くないだろうね、
口のきけない捨て子さん。』
お隣の国へ出かける、立派な船の上に立った時に、
王子様はお姫様に、こう言いました。
それから王子様は、嵐の事、海が静かな時の事、
深い所に居る不思議な魚の事、
それから潜水夫が海の中で観る、珍しい光景など、
色々と話してやったのです。
お姫様は微笑みながら、
王子様のお話しを楽しそうに聞いていました。
だって海の底のお話しなら、
お姫様の方が、よくよく知っているのですから。
お月様の明るい或る晩のこと、
舵取りの水夫だけが起きて、舵をとっていました。
他の人たちは皆、寝静まっていたのです。
そのおt気、お姫様は船べりに座り、
澄み切った水の中をじっと見ていました。
すると、お父様のお城が見えたような気がしたのです。
お城の一番高い所には、
懐かしいお祖母様が、頭に冠を被り立っていました。
お祖母様は、速い水の流れを通して、
船の方をじっと見上げていました。
その時、お姉様たちが、海の面に浮かんできて、
お姫様を悲しそうに見つめながら、
もうおしまいだと、白い手を揉み合わせたのです。
お姫様は、お姉様たちの方へ頷いて、
微笑みながら、何もかも上手く行っていると話そうとしました。
ところがそこへ、船のボーイが近づいてきたので、
お姉様たちは、水の中へ潜ってしまいました。
ボーイは、今、何か白い物を見たように思いましたが、
それはきっと、海の泡だったのだろうと思う事にしました。
あくる朝、船はお隣の国の美しい都に入港しました。
教会という教会の鐘が鳴り渡り、
高い塔から、高らかにラッパが吹き鳴らされ、
兵士たちは、ひるがえる旗をもち、
煌めく銃剣を持って、立ち並び、
王子様たちは、この国の人々に歓迎されました。
毎日、舞踏会や、夜会などの宴会が催されました。
それなのにこの国の王女は、まだ姿を現しません。
なんでもずっと遠くのある修道院で教育を受け、
王女に相応しい勉強をしているとのことなのです。
そんなある日、
とうとうこの国の王女が帰って来たのです。
人魚のお姫様はその王女がどんなに美しい女性か、
早く見たいと思っていたのですが、
見れば見るほどこんなに美しい姿の人は、
今までに見たことがありませんでした。
肌は白く、きめ細やかで、透き通るようでした。
長い黒い睫毛の奥には、愛の籠った青い目が、
にこやかにほほ笑んでいました。
『ああ、あなただったのですね。
僕が海辺に倒れていた時、助けてくれたのは!』
と、王子は叫びました。
そして恥ずかしそうに、頬を赤める王女の手を取りました。
~今日は、ここまで・・・~
ここまで読んでくださって、誠にありがとでしたぁ。
つづくですっ。
