『 人 魚 の 姫 』
前回のお話し 「人魚の姫 1」 「人魚の姫 2」 「人魚の姫 3」 「人魚の姫 4」
「人魚の姫 5」 「人魚の姫 6」 「人魚の姫 7」 「人魚の姫 8」 「人魚の姫 9」
「人魚の姫 10」 「人魚の姫 11」 「人魚の姫 12」 「人魚の姫 13」
人魚のお姫様も、美しい白い腕を高くあげ、
爪先で立ちながら、床の上を滑るように軽々踊りました。
そんなに見事に踊った者は、他には居ませんでした。
踊って動く度に、お姫様の美しさが増すようです。
その目は心の中の思いを表して、
奴隷たちの歌よりも、強く強く人の心に響きました。
人々は皆、うっとりと見惚れてしまいました。
中でも王子様の喜び方は大変な物で、
お姫様の事を、「可愛い捨て子さん」と呼びかけました。
お姫様は、足が床に触る度毎に、
鋭いナイフの刃を踏むような思いをしていました。
けれどもじっと我慢して、踊り続けたのです。
王子様は、お姫様に、
これからはいつも自分の傍に居るようにと言いました。
その上、お姫様は、王子の部屋の前にある、
ビロードのお布団に寝ても良いと、お許しも貰ったのです。
王子様はお姫様のために、男の着物を作らせて、
馬に乗っていくお供もさせました。
2人は、香りのよい森の中を通り抜けます。
すると緑の小枝が肩に触れたり、
小さな鳥たちが若葉の陰で囀ったりしています。
お姫様は王子様と一緒に、高い山にも登りました。
か弱い足からは誰の目にもわかる位、血が滲みましたが、
それでもお姫様はただニコニコと微笑み、
どんどん王子様の後ろを付いて歩いて行ったのです。
そしてとうとう雲の上に出たのです。
そこから見ると、下の方を流れている雲は、
まるで遠くの国まで飛んでいく、鳥の群れの様に見えました。
王子様のお城では、他の人たちが夜になって寝てしまうと、
お姫様は、幅の広い大理石の階段を下りて、
燃えるように痛む足を、海水の中で冷やしました。
そんな時は、深い海の底に居る、
懐かしい人たちの事ばかりを思い出されてしまうのでした。
そんなある晩のこと、
お姉様たちが手を繋いで、海の上にやってきました。
皆は、波の間に間に浮かびながら、
酷く悲しい歌を歌いました。
お姫様がお姉様たちに向って手招きをすると、
お姉様たちも、それに気付き近づいてきました。
『海の底では、あなたが居なくなってから、
みんなとても悲しんでいるのよ。』
と、一人のお姉様が言いました。
その晩からというものは、
お姉様たちは、毎晩のように訪ねて来てくれました。
ある晩には、もう何年も海の上に浮かんでいないお祖母様と、
頭に美しい冠を被った人魚の王様である、お父様とが
ずっと遠くの方に上がって来てくれたのです。
お祖母様も、お父様も、
お姫様の方へ手を伸ばしました。
けれどもお姉さま方の様に、
陸の近くまで来ることはなさいませんでした。
一日毎に、王子様はお姫様の事がどんどん好きになりました。
けれども王子様の好きな気持ちと言うのは、
それは妹を愛でるような、そんなお気持ちだったのです。
ですからお姫様の事をお妃にしようなどとは、
夢にも思ってはいませんでした。
ところがお姫様の方では、
どうしても王子様のお妃にならなければなりません。
でなければ、死ぬことのない、人間の永遠の魂を
手に入れることが出来ないのです。
それどころか、王子様が別の女性と結婚した次の朝には、
海の上の泡となって消えてしまうのです。
王子様が人魚のお姫様を腕に抱いて、
可愛い額にキスをすると、お姫様の目は、
『王子様、私が誰よりも愛しいとお思いにはなりませんか?』
と、聞いているように思えました。
『うん。お前が一番大好きだよ。』
と、お姫様の目を見た王子様が答えました。
『だってお前は誰よりも優しい心を持っていて、
僕に真心を尽くしてくれるんだもん。
それにお前はある若い娘さんに似ているんだよ。
その娘さんは、いつか一度会ったことがあるけれど、
もう二度と会う事は無いんだよ。
僕が船に乗って、海に出た時の事さ。
船は嵐にあって、沈んだけれども、
僕は波に打ち上げられて岸辺に着いたんだよ。
その近くには、修道院があって、
若い娘さんたちが、沢山お勤めをしていたのさ。
その中の一番若い娘さんが、
岸辺に打ち上げられている僕を見つけて、
命を助けてくれたんだよ。
その時、僕は、その娘さんの顔を2度しか見なかった。
でも僕がこの世の中で、一番好きに思うのは、
ただその、娘さんだけなんだ。
だけど、お前を見ていると、
とてもその娘さんに似ているんだよ。
だからね、僕の心の中にある、その娘さんの姿も、
押しのけられてしまいそうなくらいだよ。
でもその娘さんは、修道院に一生居る人だから、
幸福の神様が、代わりに
お前を僕に授けてくださったんだね。
これからは、どんな事があっても、
離れずに居ようね。』
~今日は、ここまで・・・~
ここまで読んでくださって、誠にありがとでしたぁ。
つづくですっ。
