『 人 魚 の 姫 』
前回のお話し 「人魚の姫 1」 「人魚の姫 2」 「人魚の姫 3」
「人魚の姫 4」 「人魚の姫 5」 「人魚の姫 6」 「人魚の姫 7」
「人魚の姫 8」 「人魚の姫 9」 「人魚の姫 10」 「人魚の姫 11」
お姫様は、どんなに痛くても、どんなに恐ろしくても、
王子様と、死なない魂を手に入れることだけを、
ジッと思い続けていたのです。
『だがね、これだけは忘れちゃいけないよ。
一度、人間の姿になっちまえば、
もう二度と、人魚の娘に戻ることはできないんだよ。
それにだね、王子が、王子の両親の事を忘れちまうほど、
お前を心から好きになって、
いつもお前の事ばかりを考えるようになり、
牧師に頼んで、お前と王子、二人が手を握り合い、
夫婦の誓いをきちんと立ててもらわなきゃ、
死なない魂は、お前には決して手に入らない。
もし王子が、誰かほかの女とでも結婚しようものなら、
その次の朝には、お前の心臓は破裂して、
お前は人魚の死、水の上の泡となるんだという事を、
決して忘れちゃいけないよ。
本当に、それでも構わないのかい?』
『はい、それでも構いません。』
人魚のお姫様は、きっぱりと言いました。
顔の色は死人のように、青ざめてはいましたが・・・。
『それから私に支払う代金だが、
それはどう考えているんだい?
そこを忘れてもらっても困るんだよ。』
と、魔法使いのお婆さんは言いました。
『なにしろ私が欲しいって云う物はさ、
ちょっとやそっとじゃ手に入らない代物ばかりなのさ。
そうさね、お前はこの海の底の誰よりも、
美しく綺麗な声を持っている。
その声で王子の心を、迷わすつもりなんだろうが、
実はね、私もその声を貰いたいのさ。
とても難しい薬を作るんだ。
だからねお前が持っている一番良い物を、
私は貰いたいっていう訳さ。
何しろ、飲み薬は、諸刃(もろは)の剣の様に
良く効く様にするには、
私はね、自分の血をその薬に混ぜ込まなきゃならんのさ。
そう言うことでね、この薬を作るには、
私も大変な思いをしなきゃならないんでね。』
『でもあなたに、私の声をあげてしまったら、
いったい私には何が残るのでしょう?』
人魚のお姫様は不安になり、魔法使いに聞きました。
『お前には、綺麗な姿と
美しい上品な歩き方と、
美しい目、物を言う程の目があるじゃないか。
それだけありゃ、人間の心を惑わす事が出切るってもんさ。
おやおや、お前は勇気が無くなったのかい?
だったら、今すぐにお帰り。
さもなくば、さささ、
今すぐ口を開けて、その小さな舌をお出し。
薬のお題に、お前の舌を切らせてもらうよ。
その代わり、良く効く薬はお前にやろう。』
『わかったわ。どうぞ。』
人魚のお姫様は、とうとう本当に決心をしたのでした。
魔法使いは、大きな鍋を火にかけると、
いよいよ魔法の薬を作り始めました。
魔法使いは、鍋の埃を払うために、
海蛇をクルクルと丸めると、それで鍋の中を拭きました。
それが済むと今度は、蛇の牙で魔法使いの胸を傷つけ、
どろどろとし黒い血を鍋の中に垂らし入れました。
するとそこから湯気が濛々と立ち上り、
生臭いにおいが湧きたったのです。
そしてその黒い血は、不気味な形になりました。
魔法使いは、引切り無しに、
自分の胸の傷から血を垂らすと、
どんどん煮詰めていったのです。
それが煮立つと、まるでワニの子が鳴くような音がしました。
やがて黒い血は煮詰まり
とうとう薬は出来上がったのです。
その薬はまるで、綺麗に澄んだお水のようでした。
『さてお姫様よ、出来上がったよ。』
魔法使いはそう言うと、
約束通り、人魚のお姫様に舌を出させ、
その小さな舌を切り取りました。
~今日は、ここまで・・・~
ここまで読んでくださって、誠にありがとでしたぁ。
つづくですっ。
