『 人 魚 の 姫 』
前回のお話し 「人魚の姫 1」 「人魚の姫 2」 「人魚の姫 3」 「人魚の姫 4」
「人魚の姫 5」 「人魚の姫 6」 「人魚の姫 7」 「人魚の姫 8」 「人魚の姫 9」
お祖母様は皆に声を掛けました。
『跳ねたり、踊ったり、
私たちの生きている300年と言う時間を、
愉快に楽しく暮らそうじゃないか。
それからあとは、思い残すこともなく、
ゆっくりと休むことができるというものさ。
そうそう、今夜は舞踏会を開こうかね。』
その夜の晩餐会は、陸の上の晩餐会では
とても見ることが出来ない華やかな催しでした。
大きな広間の壁や天井は、透き通ったガラスで、
広間のどこを見渡しても、
壁と言う壁には、バラ色や緑色の大きな貝が何百も、
列をなして並んでいました。
そしてその貝殻一つ一つに、
青い炎のランプがついており、
大きな広間を明るく照らしていたのです。
その上ガラスの壁から、その光が漏れ届いていましたから、
周囲の海の水は、青い光で明るく照らし出されていました。
数えきれないほどたくさんの魚たちが、
ガラスの壁の方に向かって泳いでくるのが見えました。
赤や金色の鱗を持った魚たちが、
煌めきながら泳ぎ回っていたのでした。
広間の真ん中には、幅の長い流れが一筋、
サラサラと音を立てながら流れていました。
その流れの上では、人魚の男や女たちが、
美しい人魚の歌を歌いながら、
それに合わせてダンスをしていました。
そんな美しい声は、とても地上の人間には真似できません。
とりわけ、一番下のお姫様の歌声は、
人魚の中でも誰よりも美しかったのです。
皆は手をたたいて、一番下のお姫様を褒め称えました。
お姫様も、心のなかでとてもうれしく思いました。
陸にも、海にも、自分より美しい声の持ち主は居ないと思うと、
とても自分を誇らしく思えました。
けれども直ぐまた、上の世界の事を考え込んでしまい、
あの美しい王子様の事と、
人間ならば誰もが持っている永遠の魂を思うと、
そのどちらも自分には手が届かないと解っているだけに、
悲しくなってしまうお姫様でした。
それを思うとお姫様はたまらない気持ちになってしまい、
お父様のお城からこっそりと抜けだしました。
他のみんなは、お城の中で賑やかに歌ったり、踊ったり、
舞踏会を楽しんでいるというのに、
お姫様だけはたった一人で、自分の小さな花壇の中で、
悲しみに沈み座り込んでしまいました。
その時、角笛の響きが水の中を伝って聞こえてきたのです。
お姫様は、ハッとしました。
『今、きっと王子様が船に乗って、
この海の上にいらっしゃるのだわ。
お父様よりも、お母様よりも大好きなあの人が・・・
いつも思っているあの方が・・・
ああ、私はあの方の手に、
私の一生の幸せをお任せしてもいいの。
あの方と、死ぬことが無い魂とが、
私の物になるのならば、どんなことだってやってみる。
お姉様たちが、お父様のお城の中で踊っている間に、
魔法使いのお婆さんの所に行ってみよう。
今まで怖くて、魔法使いの所には行ったことが無いけれど、
もしかしたら、良い知恵を貸して
私を手伝ってくれるかも知れないわ。』
そこで人魚のお姫様は、庭から出て、
ゴーゴーと凄まじい音を立てている、
大きな渦巻きの方へと泳いで行きました。
魔法使いのお婆さんは、
この大きな渦巻きの向こう側に住んでいるのです。
人魚のお姫様は、この渦巻きの道を、
まだ一度も通ったことがありません。
そこには花も咲いていなければ、
海草すらも生えてはいません。
ただ何にもない、灰色の砂地があるだけなのです。
それが渦を巻いている所にまで広がっていて、
大きな渦が、まるで大きな大きな水車の様に
ゴーゴーと大きな音を立てながら、
止まる事無くただただグルグルと回っていたのです。
そしてその中に一旦、巻き込まれてしまったら最後、
どんな物でも粉々に砕きさり、
深い海の底へと、引きずり込むのでした。
それなので、この道を行く時には、とても気をつけながら、
流れが緩やかな、渦の中心を通らなければ、
魔法使いの国へは、行けないのでした。
おまけにそこを通り抜けたらば、
今度は、長い長い距離を、ブクブクと泡立つ
厚い泥の上を這うように進むしか手立てがないのです。
この泥の所を魔法使いは、泥の沼と呼んでいました。
その向こうには、不思議な森があって
その森の真ん中に魔法使いは住んでいるのです。
森の中の木や藪はどれもこれも、
半分は動物で、半分は植物のポリプです。
その有様は、百の頭を持った蛇が、
地面から、生え出ているような感じです。
枝は、どれもこれもネバネバとしており、
さながらミミズが曲がりくねっている様です。
そして根元から一番先の端っこまで、
一節一節を動かす事が出切るのです。
こうしていて、水の中で何かを捕まえようものなら、
それがどんなものであれ、
ミミズの様な枝は、しっかりと巻きつき、
二度と離すことをしないのでした。
~今日は、ここまで・・・~
ここまで読んでくださって、誠にありがとでしたぁ。
つづくですっ。
