『 人 魚 の 姫 』
前回のお話し 「人魚の姫 1」 「人魚の姫 2」 「人魚の姫 3」 「人魚の姫 4」
「人魚の姫 5」 「人魚の姫 6」 「人魚の姫 7」 「人魚の姫 8」
『それに人間の一生は、私たちの一生よりも、
ずっとずっと短いのだよ。
けれども死んでしまったら、私たちは、海の泡となって、
海の上に浮いて出てしまうから、
海の底の懐かしい人たちの所で、
お墓を作ってもらう事が出来ないんだよ。
私たちは、人間と違って、
いつまでも死なない魂というものを持っていない。
だから、もう一度生まれかわるという事もない。
私たちは、あの緑の色をした葦に似ているんだよ。
ほら、葦は一度切ってしまったら、もう二度と
緑の葉を出す事が出来ないだろ?
ところが人間の魂というものは、永遠でね、
身体が死んで土に返っても、
その魂だけは、生き残っているんだよ。
そしてその魂は、澄んだ空気の中を
キラキラ瞬いているお星さまの所にまで昇って行くのさ。
そして私たちが、海の上に浮かび上がって、
人間の国を見るように、
人間の魂は、私たちが決して見ることが出来ない、
美しい所へと昇って行くんだよ。
そこはね「天国」と言う名前の所さ。
そこは人間にとっても、
肉体があり、生きているあいだには、
決して知ることが出来ない世界なんだよ。』
『どうして私たちには、永遠の命、魂がないの?
私の生きていられる、何百年と言う年月を、
すっかりお返ししても良いから、
その代わり、たった1日で良いから、
人間になってみたいわ。
そうしてその天国とかいう所へ行ってみたいわ。』
と、人魚のお姫様の一人が、寂しそうに言いました。
『そんなことを言っちゃいけないよ。』
お祖母様が言いました。
『私たちは、あの上の世界の人間よりも、
ずっとずっと幸せなんだからね。』
『だって、それならば、私は死んでしまうと、
泡になって、海の上を漂わなくてはならないのでしょ?
そうなれば、もう、
波の音楽も聞かれないでしょうし、
綺麗なお花や、真っ赤なお日様をも見られないんでしょ?
そんなのいや。
ああ、どうにかして、いつまでも死なない、
その人間の永遠の魂を授かることはできないかしら?』
『そんな事を言ってもね・・・』
お祖母様は困ってしまいました。
『でも、たった一つ、こういうことがあるよ。
人間の中の誰かが、お前を好きになって、
それこそ、お父様よりもお母様よりも、
お前の事が大好きになるんだ。
心の底から、お前を愛するようになって、
教会の牧師様の所に行って、願うんだよ。
すると牧師様が、
その人の右手をお前の右手に置きながら、
この世でもあの世でも、いつまでも
2人の真心は変わりません、永遠ですと、
堅い誓いを立ててくださる。
そうなって初めて、その人の魂が、
お前の体の中に伝わって、
お前も人間の幸福を分けてもらえるようになることだよ。
その人は、お前に魂を分け与えてくれても、
自分の魂は無くならずに、
もとの様に持ったままでいられると言うことだよ。
でもそんな事は、起るはずがない。
だって考えてもみてごらん。
その魚の尻尾にしたって、
陸の上の人間の目には、ただただ醜く見えるばかりさ。
人間には、私たち魚の尻尾の値打ちが、理解出来ないのさ。
だからその代わりに、格好の悪い
二本のつっかい棒を持たなければならないんだよ。
人間は、上手く言いつくろうために、
そのつっかい棒の事を、「足」と呼んでいるよ。』
それを聞くと、人魚のお姫様は溜息をつき、
より一層悲しそうに自分の尻尾を見つめました。
『さあさあ、明るく笑いましょう』
お祖母様は皆に声を掛けました。
~今日は、ここまで・・・~
ここまで読んでくださって、誠にありがとでしたぁ。
つづくですっ。
